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□ありったけの愛を叫ぶ
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「じゃあ、銀ちゃん。授業サボんなヨ。」

そう言って3年の教室がある2階へと上がっていく神楽の後ろ姿を見届けると、銀時は短くため息をついて自分も1年の教室へと足を向けた。

何だか朝からどっと疲れた気がした。



「おはようございます、銀さん。」

「…オス。」

銀時が教室に入ると、新八がニヤニヤしながら話しかけてきた。

「さっき、学校来る途中で銀さん達見ましたよ。」

「あ?」

「仲良さそうに手繋いでましたし、邪魔しちゃ悪いなぁと思って声はかけなかったんですけど。」

新八とは中学の頃からの付き合いで、姉の妙は神楽の親友でもあった。

当然神楽のことはよく知っている。

「…バカか、別に俺と神楽はそんなんじゃねェよ。」

そう興味なさ気に答えて自分の席に着く銀時に、新八は白々しい視線を投げかけた。

「…ふ〜ん、そうなんですか。」

「…そうだよ。」

「………。」

「………。」

「……銀さん。」

「……何だよ。」

チラッと新八に視線を向けると、顔中にニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてこちらを見ている。

「良いんですか?うかうかしてたら、そのうち誰かに神楽ちゃん盗られちゃいま…ぐはぁっ!?ちょっ、何するんですか!?」

「イヤ、顔に虫が止まってたから…」

「そんな訳ないだろ!見え透いた嘘ついてんじゃねェよ!!」

「…うるせーな。黙っとけや、この駄メガネが。」

そう言って不機嫌なオーラ全開で教室を出て行った銀時の後ろ姿を見ながら、新八はズレたメガネをかけ直すとやれやれと肩を竦めて呟いた。

「…ちょっとからかいすぎたかな。それにしても…銀さんってほんっと素直じゃないよなぁ。」



 


放課後、学校帰りの道をいつものようにブラブラと緩い足取りで歩いていた銀時は、一瞬視界の隅に入った色に思わず立ち止まった。

(……ん?)

何となく目をやると、公園に朱色のおだんご頭がチラッと見えた。

すぐにそれが神楽だと分かり銀時は声をかけようと思ったが、公園に近づいていくにつれて神楽が1人じゃないことに気づいた。

神楽は男と一緒にいた。

おそらく神楽と同じ3年生だろう。

何かを話してるようだ。

銀時のいる場所からは2人の声は聞こえないが、男の真っ赤になって緊張したような面持ちや雰囲気からすると、大体何を話してるのかは察しがついた。

「………。」

神楽は学年に関わらず男子の間で結構人気があった。

元々明るく人懐こい性格の神楽は、小さい頃から男女関係なく友達が多くて誰からも好かれていたが、特にこの春から同じ高校に通うようになってからというもの、銀時はよく学校でこういう光景を目にしたり、噂を耳にしたりするようになっていた。

そしてその度に、今までに感じたことのないような焦燥感が銀時を襲ったのだった。

不意に今朝の新八の言葉が頭をよぎる。

『うかうかしてたら、そのうち誰かに神楽ちゃん盗られちゃいますよ?』

「……チッ。」

銀時は大きく舌打ちをすると、そのままズカズカと神楽の方へ近づいていった。

「…銀ちゃん?」

突然現れた銀時の姿に、神楽は驚いたように目を見開いた。

「帰るぞ、神楽。」

銀時はそれだけ言うと、相手の男をチラリと見もせずに、神楽の手を掴み歩き出した。

「ぎ、銀ちゃんっ?」

神楽はいつもと違う銀時の様子に少したじろぎながらも、銀時に手を引かれるままその場を後にした。
 
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