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□放課後スキャンダル
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― scene1 ―
「……どういうつもりアルか?」
「何が?」
目の前の銀髪は頬杖をつきながら白々しく答えた。
「これアル!」
机の上には1週間前に行われた中間試験の答案用紙。
「赤点でしょ。だから俺今こうして補習で残ってんじゃん。」
悪びれもせずにそう答えるのは、この春から受け持つことになった3年Z組の生徒、坂田銀時。
「…で、まだ補習は始めねェの?」
「何言ってるネ、補習以前の問題アル!」
勢い余って机をバンと叩くと「センセー、怒った顔も可愛いね。」なんて呑気にふざけた事を言ってくる。
眉間を押さえて盛大にため息をつく。
コイツと話しているとどうにも調子が狂ってしまう。
普段から何かとちょっかいをかけてくるこの坂田銀時という生徒は、いつも飄々としていて何を考えているのかよくわからない、正直扱いにくい生徒だったりする。
だけど、あの問題児だらけの3Zの中では珍しく成績は良い方だし、取り立てて素行が悪いという訳でもない。
他の教科ではどうかわからないけど、授業態度だって特には問題もなかった。
(たまに横槍を入れてきて授業が一時中断することもあったけど、それは3Zではあまり珍しいことではなかったし。)
だから、今回の中間試験で坂田が答案用紙を白紙で提出したのには驚いた。
しかもよりによって私の教科だけ。
「…一体どういうつもりアルか。」
思わず唸るように呟く。
「それ、さっきも聞いたけど。」
「うっ、うるさいネ!いいからちゃんと答えるヨロシ!何で国語だけ白紙で出したアルか!?」
今回の試験は基礎問題を中心に作られていて、全体としてみれば比較的簡単だったハズ。
他の3Zの生徒達ですらギリギリ赤点を取らずに済んだというのに。
「だってさ、センセー言ってたじゃん?今回のテストで赤点を取るような奴がいたら、放課後にみっちり補習してやるって。」
そう言って奴はニヤリと口元に笑みを浮かべた。
……は?
「ちょ、ちょっと待つネ。それってつまり…わざと白紙で提出したってことアルか?」
「んー、まぁそういうことかな。」
途端にクラリと目眩がした。
一体どこまでふざけた奴なのか。
呆れて怒る気も失せて、小さくため息をついてから教卓の上の教材やプリントを片付け始めた。
「アレ、補習しないの?」
「…確かに、あれくらいの問題で赤点取るようなバカにはみっちり補習してやるって言ったけどナ…バカはバカでも、問題を解かないでわざと白紙で出すようなバカに補習してやる時間なんてあいにく私にはないネ。」
資料をトントンと揃えてから教室を出るべく戸口に向かう。
すると突然、遠慮がちに腕を掴まれた。