memorial

□If...
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それを見てしまったのは偶然だった。

公園で遊んだ帰り道、町中で何気なく視線を向けた先に映った見慣れた銀髪。

その隣、銀髪頭よりも少し下の位置でフワリと柔らかく揺れる黒髪。

すぐにそれが銀ちゃんとアネゴだってわかった。

寄り添うように歩く2人。

頬をほんのりと染め、楽しそうに銀ちゃんに話しかけるアネゴと。

いつものように気だるげな表情で、だけどもさりげなく歩く速さをアネゴに合わせながら話を聞いている銀ちゃん。

アネゴの話に相づちを打ちながら、時々口元に小さく笑みを浮かべて。

その様子が2人から離れた位置にいた私でもよく分かった。

その瞬間覚えた胸の痛みは、私にあの時感じた違和感の正体を教えてくれた。

(…そういう、ことだったアルか…)

全てを理解したと同時にそれを後悔する。

今さらになって気づいた想い。

(私は…銀ちゃんが…)

だけど目の前の光景が、その想いは決して叶うことはないと、イヤでも私に分からせてくれた。

アネゴに告白されたと言ってた銀ちゃんの言葉を思い出す。

きっと銀ちゃんはアネゴを選んだんだ。

(…気づいた途端に失恋決定アル…)

目に映る2人の姿がだんだんと歪んでいって。

自分が泣いてるという事に気がついたのは、定春に顔を舐められた後だった。

涙が後から後から頬を伝って止まらない。

「………っ」

私はそれ以上その光景を見ていたくなくて、2人から視線を逸らして踵を返した。



それから私は自然と銀ちゃんを避けるようになっていった。

自分勝手だとは分かっていたけど、想いを忘れて以前のように銀ちゃんに接することができるほど器用じゃなくて。

もしかしたら勘のいい銀ちゃんは、私に避けられている事にとっくに気づいてるかもしれない。

だけどそれを気にする余裕がないくらい、私はショックを受けてたんだと思う。

銀ちゃんもアネゴも大好きなのに。

それなのに"好き"の種類が変わるだけでこんなにも胸が苦しくなる。

苦しくて2人の事を何も考えたくなくて。

ただ早くこの想いが薄れていけばいいと思った。
 
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