memorial
□If...
1ページ/5ページ
"もし"なんて仮定に意味はないのかもしれない。
だけども考えずにはいられない。
ねえ、銀ちゃん。
もしあの時、私が自分の気持ちに気づいていたなら。
そしたら、今の私達の関係は変わってたのかな?
「…なァ神楽、もし俺がお妙に告白されたっつったら…お前どうする?」
それはいつもの昼下がり。
ソファーに2人揃って座りながら昼ドラを見ていると、銀ちゃんが突然呟くように言った。
「…とうとう頭の中まで糖分にやられてしまったアルか。吐くんならもっとマシな嘘にしろヨ。」
当然私はそれを質の悪い冗談だと思ったけど、返ってきたのはいつになく真面目な口調だった。
「……嘘じゃねェよ。」
静かにただ一言。
だけどその一言だけで、私は銀ちゃんが嘘を吐いてないと確信できた。
それと同時に、何故か急に万事屋が静まり返ったように感じた。
テレビの音がやけに大きく聞こえる。
「…………。」
何も言わずただ真っ直ぐに見つめてくる銀ちゃんに、私は何となく居心地の悪さを感じながらも口を開いた。
どうして私にそんな事を言うのか、少し引っかかるところはあったけど。
「……良いんじゃないアルか。」
「…………。」
「アネゴ 美人だし、料理はその…アレだけど、優しいし…」
言いながら私は何故か自分に違和感を感じていた。
アネゴは同性として自分の憧れの存在だし、その言葉に偽りなんてない。
なのに感じる違和感。
その正体にこの時の私は全く気づけなかった。
だけど、銀ちゃんがしばらくして「そうか。」と静かに答えて視線を逸らした時、一瞬だけ胸が痛んだ気がした。