memorial
□斯くして、僕は彼女にハートを占領されました
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「…あっ、銀さん!コレよく見たらラベルに小さく何か書いてますよ。」
空きビンを調べていた新八がラベルの下の方を指さして見せてきた。
確かに小さいが何か文字が書いてある。
「何て書いてんだ?」
「待って下さい。ええっと……"LOVE POTION"?」
「ラブポーション?何だそりゃ?」
聞き慣れない言葉に首を捻っていると、新八があっ!と何かを思いついた様に声を上げた。
「銀さん…もしかしてコレっていわゆる"惚れ薬"ってやつじゃないスか?」
「…惚れ薬ィ?」
俺と神楽を交互に見ながら新八は続ける。
「たぶん今の神楽ちゃんは薬の効果で銀さんに惚れちゃってるんですよ。」
「んなバカな…」
そう言いながらも、今までの神楽の様子を思い返すと認めざるを得なかった。
「……コイツ、絶対こういうモンだって知らずに飲んだな。」
「…でしょうね。」
呆れたように呟くと、新八も苦笑しながら頷いた。
「…で、効き目はどれくらいか書いてあるか?」
「ええっと…個人差もあるみたいですけど、大体半日ぐらいだそうですよ。」
「そうか…」
それを聞いてほっとしたと同時に、心のどこかで少し残念に思っている自分がいた。
「…それにしても辰馬のヤロー、神楽に変なモン渡しやがって…」
よく見もしないで薬を飲んじまった神楽も神楽だが、そもそもの元凶はあの毛玉だ。
江戸に来る度に必ず何か騒動を引き起こす奴は、今回も例に漏れずやらかしてくれたのだった。
「…でもまぁ、銀さんで良かったですよ。」
「…あ?何が?」
言葉の意味が分からず聞き返すと、新八は困ったように笑った。
「だってもし神楽ちゃんがあの薬を万事屋じゃなくて外で飲んでたら、全く知らない他人に惚れちゃってたかもしれないんですよ?怪しい奴とかだったら神楽ちゃん今頃どうなってたか…」
「………。」
神楽が誰か他の男に惚れる?
想像するだけで吐き気がした。
「まぁ、銀さんにしてみればいい迷惑だったかもしれませんけど。」
「イヤ、俺は別に…」
迷惑?
そんなことねェよ。
確かに最初はいつもと違う神楽に戸惑っちまったけど。
でも、惚れられるってのも悪い気はしなかったし。
イヤ、むしろ…
そこまで考えて俺はある事実にはたと気づいた。
「……え?アレ?」