memorial
□斯くして、僕は彼女にハートを占領されました
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一体、この状況を俺にどうしろというのか?
「ハイ銀ちゃん、あ〜ん」
「……あ、あ〜ん」
ソファーに腰かけて昼飯を食ってる横で、さっきから甲斐甲斐しく俺の世話をする神楽。
「銀ちゃん、おいしいアルか?」
頬を薄く染め、小首を傾げながら尋ねてくるその姿はさながら新妻のようで。
これで神楽がピンクのフリフリエプロンなんか着てたりすると、もう完璧に新婚さんの食事風景だ。
一瞬、そんな事を他人事のように考えた。
向かいのソファーでは、口に箸を運びかけて止まったままの新八が、まるで信じられないモノを見ているかのような顔をしている。
まあ、その気持ちはわからんでもないが。
定春だけが我関せずといった様子で、いつものように部屋の隅っこで丸くなっていた。
そもそも何でこんな事になってるかと言うと、それは数時間前に遡る。
今日はというか今日も依頼がなく、朝から暇を持て余していた。
新八は家の用事で遅れるらしくまだ来ていない。
神楽は定春の散歩に出かけていて、万事屋には俺一人だけだった。
俺はと言うと、ソファーに横になって昨日買ったジャンプを読み返していた。
その内に神楽達が散歩から帰ってきて。
ここまではいつもと何ら変わりはなかった。
「オイ神楽、それ何持ってんだ?」
今日がいつもと少し違ったのは、神楽の手にピンク色の液体が入ったビンが握られていた。
「おっ、ひょっとして…いちご牛乳か?いやァ、何か悪ィな。神楽ちゃん、それ銀さんの為に買ってきてくれたんだ?」
そう言ってビンに伸ばそうとした手をペチンと叩かれる。
「勘違いすんじゃねーヨ。これは私のアル。」
言うが早いか、神楽は俺の目の前で見せびらかすようにビンの中身を飲み始めた。
もちろん腰に手を当てるのを忘れない。
「チッ…んだよ、ちょっとぐらいいーじゃねェか。」
ビンの中身はあっという間に空になってしまった。
「プハーッ!うまいネ!」
(オッサンかよ…)
内心呆れながらも、再びジャンプに視線を戻そうとした、その時。
ゴトッという鈍い音と共に、空きビンが床に転がって。
「うっ……!?」
「えっ、ちょっ…オイ、神楽っ!?どうした!?」
神楽は両手で胸を押さえてその場に蹲った。