memorial

□first step
2ページ/2ページ


「――ちゃん、聞いてるアルか?」

「……え?」

ハッとして呼ばれた方へ目を向ければ、神楽が頬を膨らませながら俺を見ていた。

「だからァ!もうすぐ私の誕生日だって言ってるアル。」

「へー…」

「…何アルか、その興味なさそうな返事は!」

ますます頬を膨らませる神楽に苦笑しつつ、冗談だと頭を撫でて宥めすかす。

うん、やっぱり可愛い。

「…んで、何か欲しいモンでもあんの?言っとくけど、俺あんま金持ってねェぞ。」

「ううん。別に何が欲しいとかそーいうのじゃないネ。私とデートしてヨ、銀ちゃん。」

「………は?」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

「…えっと、神楽ちゃん、もっかい言ってくれる?」

「だから、誕生日は私とデートしてほしいネ。」

どうやら聞き間違いではなかったようだ。

「…デ、デートってお前、意味わかって言ってんのか?」

柄にもなく焦って、声が少し上擦ってしまった。

「ちゃんとわかってるネ。好きな人同士が出かける事ダロ?私は銀ちゃんが好き、銀ちゃんも私のコトが好き。問題ないネ。」

「ちっ、ちょっと待て!」

何だか今とんでもない事実を聞いた気がする。

「…今、なんつった?」

「問題ないネ?」

「その前は?」

「私は銀ちゃんが好きで、銀ちゃんも私のコトが好き。」

「!?」 

思いもよらない神楽の言葉に、一瞬固まってしまった。

頭の中は軽くパニック状態。

神楽が俺を好き?

イヤイヤ、そんなのどうせ"お兄ちゃんのコトが好き"みたいなノリだろ、きっと。

「…言っとくけど、私本気アルヨ。」

「!」

「私、銀ちゃんが好き。」

そう言って真っ直ぐに俺を見据えるその目が、表情が、ただ綺麗だと思った。

「俺は…」

だったら、俺もちゃんと神楽に応えなければならない。

自分でも中々認められなかった神楽への気持ち。

もしかしたら、神楽はそんな俺の想いにすら気づいていたのかもしれない。

本当にコイツには敵わない。

これじゃあまるで自分の方が子供みたいだ。

思わず苦笑してしまう。

「…銀ちゃん?」

首を傾げる神楽の頬にそっと触れて。

「…俺も好きだ、神楽。」

耳元に唇を寄せてそう囁くと、神楽は薄く頬を染めた。

「…そんなのとっくに知ってるネ。」



「ねェ、銀ちゃん。デートはどこに連れてってくれるアルか?」

期待に満ちた目が俺を見つめてくる。

「…つーか、その前に今度のテストなんとかしねーとな?今の状態じゃ、補習や追試でデートどころじゃなくなるぞ。」

「マジでか!」

もちろん、俺がそうはさせねェが。

大事な初デートが懸かっているのだから。

「私、頑張るアル!!」

「おう。」

意気込む神楽の頭を撫でながら、チューはデートまで我慢、なんてコトを考えていたのは内緒の話。




end.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ