memorial
□first step
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「――ちゃん、聞いてるアルか?」
「……え?」
ハッとして呼ばれた方へ目を向ければ、神楽が頬を膨らませながら俺を見ていた。
「だからァ!もうすぐ私の誕生日だって言ってるアル。」
「へー…」
「…何アルか、その興味なさそうな返事は!」
ますます頬を膨らませる神楽に苦笑しつつ、冗談だと頭を撫でて宥めすかす。
うん、やっぱり可愛い。
「…んで、何か欲しいモンでもあんの?言っとくけど、俺あんま金持ってねェぞ。」
「ううん。別に何が欲しいとかそーいうのじゃないネ。私とデートしてヨ、銀ちゃん。」
「………は?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「…えっと、神楽ちゃん、もっかい言ってくれる?」
「だから、誕生日は私とデートしてほしいネ。」
どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「…デ、デートってお前、意味わかって言ってんのか?」
柄にもなく焦って、声が少し上擦ってしまった。
「ちゃんとわかってるネ。好きな人同士が出かける事ダロ?私は銀ちゃんが好き、銀ちゃんも私のコトが好き。問題ないネ。」
「ちっ、ちょっと待て!」
何だか今とんでもない事実を聞いた気がする。
「…今、なんつった?」
「問題ないネ?」
「その前は?」
「私は銀ちゃんが好きで、銀ちゃんも私のコトが好き。」
「!?」
思いもよらない神楽の言葉に、一瞬固まってしまった。
頭の中は軽くパニック状態。
神楽が俺を好き?
イヤイヤ、そんなのどうせ"お兄ちゃんのコトが好き"みたいなノリだろ、きっと。
「…言っとくけど、私本気アルヨ。」
「!」
「私、銀ちゃんが好き。」
そう言って真っ直ぐに俺を見据えるその目が、表情が、ただ綺麗だと思った。
「俺は…」
だったら、俺もちゃんと神楽に応えなければならない。
自分でも中々認められなかった神楽への気持ち。
もしかしたら、神楽はそんな俺の想いにすら気づいていたのかもしれない。
本当にコイツには敵わない。
これじゃあまるで自分の方が子供みたいだ。
思わず苦笑してしまう。
「…銀ちゃん?」
首を傾げる神楽の頬にそっと触れて。
「…俺も好きだ、神楽。」
耳元に唇を寄せてそう囁くと、神楽は薄く頬を染めた。
「…そんなのとっくに知ってるネ。」
「ねェ、銀ちゃん。デートはどこに連れてってくれるアルか?」
期待に満ちた目が俺を見つめてくる。
「…つーか、その前に今度のテストなんとかしねーとな?今の状態じゃ、補習や追試でデートどころじゃなくなるぞ。」
「マジでか!」
もちろん、俺がそうはさせねェが。
大事な初デートが懸かっているのだから。
「私、頑張るアル!!」
「おう。」
意気込む神楽の頭を撫でながら、チューはデートまで我慢、なんてコトを考えていたのは内緒の話。
end.