memorial
□first kiss
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私と銀ちゃんが付き合うようになったのはほんの1週間前。
つい最近まで幼なじみだった銀ちゃんは、私にとって可愛い弟のような存在だった。
だけど、銀ちゃんはいつの間にか"弟"ではなくて一人の"男の子"になっていて。
その事に嫌という程気づかされたのは、銀ちゃんに初めて告白された時だった。
『神楽、好きだ。』
正直、どう答えていいかわからなくて。
『ありがとアル。』
結局、その時は告白を受けるでもなく断るでもなく、そう逃げてしまった。
だけどその日から、私の中で"銀ちゃん"という存在は異性として急速に大きくなっていった。
そして、次の日から毎日のように浴びせられる告白の数々。
相手にしなかったんじゃない。
恥ずかしくてまともに聞いてられなかっただけ。
子供扱いしてたのは、もう"弟"じゃなくなってしまった銀ちゃんに戸惑っていたから。
その辺の乙女心、わかれよコノヤロー。
いつもは死んだ魚のような目をしてるクセに、たまに見せる表情は、視線を逸らすことができないくらい真っ直ぐな目をしていて。
ズルイ、と思う。
今だってホラ、さっきまでの子供っぽい顔はどこにいったのやら、急に"男の子"の表情になって。
いつの間にか目の前まで来ていた銀ちゃんに驚きつつも、私を見つめる真剣な目に、体が金縛りにあったみたいに動かなくなる。
「神楽…」
熱っぽい声で名前を呼ばれると、たちまち何も考えられなくなってしまう。
心臓の音が銀ちゃんに聞こえてしまうんじゃないかってくらい煩くて。
だけど、頬に触れる銀ちゃんの手が少し震えているのに気づいた。
(…もしかして銀ちゃんも緊張してるアルか?)
大きな手にそっと自分の手を重ねてみた。
すると、銀ちゃんはホッと息を吐いてスゴく嬉しそうな顔をして。
(あ、可愛い…)
そう思った瞬間、唇に柔らかい感触がした。