memorial
□first kiss
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もうかれこれ30分は経っただろうか。
「…いつまでそうやって拗ねてるつもりアルか。」
そう言って部屋の隅っこに視線をやれば、膝を抱えた銀髪が不貞腐れた顔を上げてこっちを向いた。
その左の頬には、つい30分程前につけた手形がまだうっすらと残っている。
「もう機嫌を直すアル。ホラ、せっかく銀ちゃんの為においしいケーキ買ってきたんだから一緒に食べようヨ。」
"ケーキ"という言葉に一瞬ピクリと反応するものの、それでも頑なにそこを動こうとはしない。
「ハァ…銀ちゃん、いい加減に…」
「…だってよ」
ようやく口を開いたかと思うと、銀ちゃんは口を尖らせながら呟いた。
「…今日は誰の誕生日?」
「…銀ちゃんの、ダロ?」
「だよな。それなのにビンタってヒドくね?」
「だ、だってアレは銀ちゃんが悪いネ!いきなりチューしようとするから…」
「そりゃあ、俺も健全な男の子だもん。好きな女と2人きりになったら我慢なんかできねェよ。それに俺達もう恋人同士じゃん。」
そう言って、銀ちゃんはまるで小さな子供みたいに頬を膨らませた。
「…神楽、俺のこと好きっつったよな?」
「う…言った、けど…」
「今までどんだけ好きだっつっても全然相手にしてくんなかったし、やっと両想いになれたかと思ったら、1コ下ってだけでいっつも俺のこと子供扱いするし…」
「だってそれは…」
「だから俺、やっと今日で神楽と同い年になれたからって思ったのによー…」
そう言って左の頬を擦る銀ちゃんを見ながら、私は心の中で深くため息をついた。
(ハァ、やってしまったアル…)