memorial
□君じゃなきゃ。
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「ここはやっぱり変わってないアルナ…」
ゆっくりと歩きながら、通り過ぎていく見慣れた風景に目を向ける。
相変わらずかぶき町は賑やかで、たくさんの店や建物が並んだ通りには、いろんな人や天人が行き来している。
そしてそんなかぶき町の喧騒に包まれていると、やっぱり自分は帰ってきたんだという実感が改めて湧いてくる。
時折、何人か見知った顔とすれ違いざまに二つ三つ言葉を交わしながら、着いたのはいつもの公園。
その一角にあるベンチに腰を下ろし、来る途中に駄菓子屋で買った酢昆布を取り出した。
小さな子供たちが楽しそうに駆け回っているのを目で追いながら、自分も3年前までは毎日のようにここで友達と遊んだりしていたなとボンヤリ考える。
公園の真ん中では、噴水が柔らかに降りそそぐ日差しに反射してキラキラと光っている。
ふと空を見上げると、雲一つない澄んだ青空がどこまでも広がっていた。
時間がゆっくりと静かに流れていく。
ああ、なんて穏やかなんだろう。
こうしていると、パピーと一緒に宇宙をまわっていた日々がまるで夢のように感じられた。
えいりあんはんたーとして過ごした日々はとても充実していた。
えいりあんを追っていろんな惑星に行き、今まで見たこともないような景色や生物に遭遇したりした。
一人でえいりあんを仕留めることもできるようになった。
そして、たくさんの出会いもあった。
だけど、いつの頃だっただろうか。
そんな充実した日々を送る中、心のどこかで物足りなさを感じている自分がいる事に気づいたのは。
いつの頃からか、気がつけば空を見上げている事が多くなった。
いつの頃からか、人混みの中で一瞬でも銀色が視界の隅に入ると、その度にそれを目で追うようになっていた。
最初はそれが所謂ホームシックなのだろうと思っていた。
血は繋がってなくても万事屋の皆は私の大切な家族だ。
だからそれが今頃になって急に寂しくなってしまったんだろう、と。
きっと時間が経てば元に戻る。
そう、思っていた。
だけどいつまで経ってもそれは直らず、空を見上げるのも銀色を目で追ってしまうのも、いつの間にかクセになってしまっていた。
そして同時に、自分の中にあるその感情をどうしていいか分からずに持て余し始めていた。
その為か、気持ちの整理が全くつかずに手紙を書くこともできなくなってしまった。
どうしてこんなにも銀ちゃんの事ばかり考えてしまうのか。
何で銀ちゃんの事を考えている時だけ胸が苦しくなるのか。
今までこんなことなかったのに。
どれだけ考えても一向にその答えは出なくて、ただただ時間だけが過ぎていった。