memorial
□I miss you.
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「会いてぇなぁ…」
無意識のうちに呟いてしまっていた言葉は、夜の静けさに反して冷え切った暗い一人きりの部屋で大きく響いた。
途端に襲うどうしようもない寂しさに、ああ自分は寂しいのかと案外すんなりと受け入れることができた。
以前までの自分ならこんなに素直に認めることなんてできなかった。
それを変えたのは今は傍にいないあの少女だ。
否、もう少女とは呼べないほどに彼女は美しく一人の女へと成長した。
『じゃあ行ってくるネ、銀ちゃん!』
笑顔でこちらに手を振る彼女を見送ってからもうどれくらいになるのか。
きっとあの時よりさらに強くて綺麗な良い女になっていることだろう。
「ハァ… 」
ため息ばかりが溢れていく。
月を拝もうと開けた窓からは冷たい冬の空気が容赦なく入り込んでくるが、アルコールで火照った頬にはちょうど良かった。
会いたい。
今すぐに会いたい。
「かぐら…」
自分でも笑えるほどの情けない声音に返ってくる声はなかった。
「まぁたやってたアルか…!」
呆れた声と同時にパッと部屋の電気が点いて眩しさに目を瞬く。
明るさに慣れると目の前にいたのは自分がずっと待ち望んでいた女の姿。
「か、かぁぐらちゅわぁぁん!!」
酔いの回った身体で何とか立ち上がってひしと抱きしめると、ため息と共に頭をポンポンとあやすように撫でられた。
「銀ちゃん、たかだか一週間いないだけで毎回毎回何年ぶりかの再会みたいな感じ出すのいい加減やめてヨ。こないだも新八や姉御達がひいてたアル。」
「たかだかとは何だよ、たかだかとは。一週間ったってお前がいねぇなら俺にとっちゃ死活問題なのよ?」
この際全部酔いのせいにしてしまえと、甘えるように目の前の大きく柔らかな二つの膨らみに顔をグリグリと埋める。
「ハイハイ、分かってるネ。ってか、ほんと銀ちゃん変わったアルな。」
「…ダメかよ。」
「んーん、素直な銀ちゃんも悪くないアル。…まぁ、おっさんが拗ねたり甘えたりする絵面は正直キモいけど。」
「ちょっ、神楽ちゃんんん!?」
ボソッと呟かれた最後の台詞にグサリと刺されつつも、離れるものか離すものかと腕の中にきつく閉じ込める。
「ん…銀ちゃん、手とか顔とか冷たいヨ。」
「じゃあ、神楽ちゃんがあっためて。」
「…オヤジくさいアル。」
「でも、そんな俺も悪くないんだろ?」
耳元で囁いてニヤリと笑う。
「ま、そうアルな。…んじゃ、今から神楽様が寂しがり屋の銀ちゃんを一週間分あっためてやるか!」
「おー、そりゃ楽しみだ。」
「あ、忘れてた!銀ちゃん!」
「ん?」
「ただいま!」
「…ああ、おかえり。」
end.