memorial
□それはきっと必然の、
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「…………。」
「…………。」
探り合うようにお互い無言で見つめ合うこと十数秒。
先に口を開いたのは神楽だった。
「……ねェ、名前…何ていうアルか?」
さっきからどうにもこの少年が銀時の姿に重なって見えて仕方がない。
年は自分より3〜4才下ってところだろうか。
確かに江戸で銀髪は珍しいが、だからと言ってすぐに銀髪=銀時と結びつけてしまった自分の思考に神楽は内心苦笑した。
「もしかして"銀時"…じゃないアルよな?」
そんなハズはないと分かっているのに。
諦めにも似た気持ちで問うと、返ってきたのは予想外の返事だった。
「…何で俺の名前知ってんだ?」
「………へ?」
思ってもみなかった答えに、神楽は思わず口をあんぐりと開けたまま固まってしまう。
「…オイ?」
「………。」
「オイ、大丈夫か?」
「……"ぎんとき"?」
「あ?…そうだけど。」
まさかという疑念が淡い期待へと変わっていく。
「…"さかたぎんとき"…?」
「……アンタ、俺の名字まで知ってんのかよ?」
「…"坂田銀時"……」
「だからそうだって言って……ウワッ!?」
言葉の続きを遮るように、神楽はその少年ーー銀時に思いきり抱きついた。
しかし、そこは神楽よりも小さな少年の身体。
勢いのついた神楽の身体を受けとめることが出来るわけもなく、そのまま後ろに2人揃って倒れ込んでしまった。
「イッテェ…!」
背中と頭を地面に強く打ちつけ、銀時が痛みに顔を歪める。
「ちょっと!アンタ一体何なん…」
「……っ、ひっく……」
「!?」
文句を言おうと上半身を起こそうとしたところで、銀時の耳に小さな泣き声が聞こえてきた。
「…うっ、ぎんちゃ……っ…」
「…………。」
自分の胸元で肩を震わせ泣き始めた神楽に、銀時は途方に暮れる。
一方、目が覚めて知らない場所にいたという不安と心細さを感じていた神楽は、自分の知る姿と違うとはいえ"銀時"に出会えたという安堵感でいっぱいで、次から次へと溢れてくる涙を止めることが出来なかった。