memorial

□それはきっと必然の、
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冷たい空気が頬を撫でる感触に、少女は小さく身震いをして目を覚ました。

いくら日中とはいえ、昼寝をするには外はもう適さないかもしれない。

そんな事を考えながら、まだ少し眠い目を擦って上半身をゆっくりと起こすと、少女ーー神楽は掠れた声で呟いた。

「……アレ、ここ…どこアルか?」

ぐるりと辺りを見回すも、いつもの見慣れた公園の景色じゃないことは明らかだった。

「…ここ、どこ…?」

ポツリともう一度呟くも、それに応えてくれる声は一つもない。

状況が全く飲み込めない神楽は、しばらくの間ただ呆然とその場に座っていることしかできなかった。

辺りはシンと静まり返っていて、段々と心細くなってくる。

(…銀ちゃん…)

不意に近くの茂みがガサガサと音をたてて揺れ、神楽は反射的に傘を掴んで立ち上がった。

「!?」

音のした方へと視線を向けて傘を構える。

今自分がいるのが見知らぬ場所だからか、いつも以上に警戒心が強くなり、身体中に一気に緊張が走る。

神楽はゴクリと息を飲んだ。

「………っ」

しかし次の瞬間、視界に映ったのはよく見知った銀髪。

神楽はホッと息をついて身体の力を抜いた。

(良かった、銀ちゃんだ…!)

瞬時にそう理解し構えていた傘を降ろすと、茂みの奥の銀髪に声をかけようとした。

ここは一体どこなのか。

銀時は自分を迎えに来てくれたのか。

とにかく聞きたいこと、話したいことがたくさんあった。


だが、開いた口からは何も言葉が出てこなかった。

「………。」

生い茂った草を掻き分け現れたのは、確かに見慣れた銀髪に赤い瞳。

しかし、その人物は神楽の思い描いていた者ではなかった。

「……誰アルか?」

無意識にポツリと呟いた言葉に、目の前の人物はピクリと片方の眉を吊り上げた。

「…アンタこそ誰だよ?」

不機嫌そうに眉間にシワを寄せて腕を組むその姿が、神楽の目に一瞬銀時の姿と重なって映る。

だが、目の前の人物は決して自分の知る銀時ではない。

なぜならばーー

「…お前、こんなとこに一人でいてもしかして迷子アルか?」

そう言って神楽は相手に目線を合わせるように少し屈んだ。

「なっ!?俺は迷子なんかじゃねェ!ガキ扱いすんなっ!!」

「イヤ、どう見たってガキアル。」

ーーそう、神楽の前に現れたのは、銀髪は銀髪でもまるでダメな大人ではなく小さな少年だったのだ。
 
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