memorial

□幸福の在り処
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分娩室の前では、可愛い娘の旦那が落ち着かない様子で扉の前を行ったり来たりを繰り返していた。

銀時と新八が来たのに気づいて一度立ち止まって軽く頭を下げたが、じっとしていられないのか再びソワソワと動き始める。

そうして待つこと数十分。

中から苦しそうな声が聞こえる度におろおろとする男に、仕方がないから励ましの言葉でもかけてやろうかと銀時が一歩足を踏み出した瞬間―――元気な赤ん坊の泣き声が廊下にまで響いてきた。

「おめでとうございます!!元気な男の子ですよ!」

看護師に中に通されてそう告げられると、たった今父親になったばかりの男はボロボロと涙を流しながらグシャグシャの顔で喜んだ。

「全くもう…泣きすぎアルヨ…」

少し呆れた様子で、でも嬉しそうに呟いた彼女は、もうすでに立派な母親の顔をしていた。


「…よく頑張ったな。」

そう言って銀時がそっと朱色の頭を撫でてやると、昔と変わらないとびっきりの笑顔が返ってきた。

「…ウン!」


「あ、そう言えば…銀さん、今日って10日ですよね?」

「あ?んー、そうだっけ?」

「そうアル。この子、銀ちゃんと同じ日に生まれたネ。」

赤ん坊の顔を愛おしそうに見つめる神楽に、銀時も目を細める。

「そうか………なァ、生まれてきてくれてありがとな…」

「…銀ちゃん…」

赤ん坊にそう語りかける銀時の表情はとても穏やかで優しかった。



「…さてと、そろそろ俺らはお暇するかね。」

「そうですね。後は若い人達だけで…」

「…新八、その台詞おっさんくさいアルヨ。あっ、もうおっさんだったっけ?」

「ちょっ、神楽ちゃんんん!?」

その瞬間、まるであの頃の万事屋に戻ったかのような明るい笑い声が部屋中に響いた。


「じゃあまた来るからよ。」

「ウン…あ、ちょっと待って!」

銀時達が病室を出て行こうとするとソプラノの声に慌てて呼び止められた。

「ん?どうした?」

「まだ大事なコト言ってなかったネ…!」

「?」



「パピー、誕生日おめでとう!」



「…ああ、ありがとなーー銀楽…」


自分と同じ色をした大きな目が細められるのにつられて、銀時も自然と顔を綻ばせた。
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