memorial
□触れた手から伝えて
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「またかよ…。」
そう呟いて銀時少年は深く深くため息をついた。
イライラとした様子で辺りを見回すその両手には、大きな買い物袋が抱えられている。
「チッ、何であの時断っちまったんだ…」
今さらになって後悔しても遅いけれど。
荷物を持つ手が寒さで悴んできたのに忌々しげに舌打ちをして、銀時は自分にしか聞き取れないような小さな声で呟いた。
「…手ェ繋いどきゃ良かった。」
ことの発端は少し前に遡る。
地獄のような期末テストをくぐり抜け、あとは冬休みをのんびり待つばかりというある日の昼休み。
誰かがクラスで少し早いクリスマスパーティーをしようと言い出したのが始まりだ。
それはいい考えだと、あっという間にほぼ強制的に全員参加となった。
面倒くせェ。
それが銀時の感想だった。
しかし、口を挟む間もなくあれやこれやと日程やら役割やらが次々と決められていき、いつの間にか飾りなどの買い出し担当というどうにも面倒な役割まで当てられていた。
それでも銀時が渋々引き受けたのは、ケーキや菓子をたくさん用意するという約束と、もう一人の買い出し担当が神楽だったからだ。
買い出し当日、待ち合わせ場所に早めに着いた銀時は、何かコレってデートっぽくね?なんて少し浮かれていた。
否、かなり浮かれていた。
神楽に友達以上の感情を抱いていた銀時にとって、これは二人の距離を縮める又とないチャンス。
あわよくば…なんて考えがないと言えば嘘になる。
とにかく銀時少年は浮かれていた。
待ち合わせに現れた神楽は、当然だが見慣れたいつもの制服じゃなくて私服だった。
待ったアルかー?なんて息を弾ませながら駆けてくる様子に、思わず顔がニヤけそうになる。
(可愛いじゃねーかコノヤロー!)
第一印象はこの一言に尽きた。
最もそんな事本人に面と向かって言えるはずもなかったが。
緩みそうになる口元をどうにか引き締め、いつも通りの自分を装う。
「…じゃあ、さっさと買い出し済ませようぜ。」
さも面倒くさそうに言いながらも、内心はウキウキだった。
だからこそ、すぐには気づけなかった。
自分の考えがいかに甘かったかという事に。
買い出しを始めて早々、神楽とはぐれてしまった。
クリスマス前の休日ともなればどこも人で溢れ返っているので、こうなるのも仕方のないことだ。
幸い目的の店はあらかじめ話し合っていたから、そこに行けばすぐ見つかるだろうと、銀時は軽い気持ちでいた。
だが店の入口で待っていても神楽は一向に現れない。
お互いケータイなんて持ってないから連絡の取りようがなく、寒さに身震いしながら店先でおだんご頭を探すハメになった。
ようやく店に来た神楽はどうやら迷っていたらしい。
鼻の頭を赤く染め、ごめんアルなんて上目遣いで謝られたら寒さも一気に吹き飛んでいった。
「今度はちゃんと銀ちゃんから離れないようにするネ。」
そう言っていたのに。
そのわずか5分後、銀時はまた神楽を見失った。