memorial

□夢の続き、幸せの続き
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「ただいまヨー。」

買い物を終えて帰ってきた私の目に映った光景。

行儀悪く机に足を乗せてジャンプを読み耽る銀ちゃんと、ソファーにはお茶を啜りながらテレビを見ている新八。

その向かいでは定春が大きなアクビをしている。

それは、万事屋ではごくごくありふれた日常の光景。

そのハズなのに私はどこか違和感を感じて、そうしてすぐに理解した。

ああ、これは夢なんだ、と。


『おかえり、神楽ちゃん。おつかいご苦労様。』

そう言いながら新八がこっちにやって来て買い物袋の中身をチェックする。

『神楽、いちご牛乳はちゃんと買ってきただろうな?』

銀ちゃんはやっぱりというかジャンプから目を離さない。

『そんな余分なモノ買うお金なんか渡してないですよ。』

『あん?じゃあ神楽が手に持ってんのは何だよ!?』

ようやく顔を上げた銀ちゃんに、これ見よがしに手の中の赤い箱を見せつけてやった。

『おつかいのお駄賃ですよ。酢こんぶ1つだけ買ってもいいって言ったんです。』

『なんで神楽だけ…』

『何子供みたいなコト言ってんですか。大体今日はアンタが買い物当番だったでしょうが。それを…』

不満気にブツブツと文句を言う銀ちゃんに、新八が呆れながら説教を始める。

ああ、なんて懐かしい光景なんだろう。

そう感じた瞬間、目の前が柔らかい光に包まれて真っ白になった。



次に目を開けると、そこは万事屋の玄関だった。

「…ただいまヨー。」

買い物袋を抱えながら廊下をゆっくりと進む。

そうして居間に入った私の目に映ったのは――

「おう、おかえり。」

相変わらずクルクル天パの銀ちゃんと。

「あうー」

銀ちゃんの腕に抱えられた、これまたクルクル天パな男の子。

「――ただいま銀ちゃん、銀楽。」

あれから何年もの年を重ねて、今の私のごくごくありふれた、それでいてとても幸せな日常がある。

銀ちゃんと私と、そしてあの頃には想像すらしていなかったもう一人の大事な存在。

「いい子にしてたアルかー?」

フワフワの髪を撫でると、嬉しそうに声を上げる。

一方、私から買い物袋を受け取った銀ちゃんは横で不満気な声を上げる。

「なァ神楽、銀さんのいちご牛乳は?」

「…そんな余分なモノ買うお金なんて持ってってないネ。」

さっきの夢と同じコトを聞いてきた銀ちゃんに思わず吹き出しそうになった。

きっと次はこう言うんだ。

「ええ!?じゃあお前の…」

「"手に持ってんのは何だよ"?」

「お、おう…」

「これは買い物行ってきたお駄賃アル。」

「なんでお前だけ…」

案の定ブツブツと子供みたいな文句を言い始めた銀ちゃんに、今度は堪えきれずに吹き出してしまった。

ああ、何も変わってない。

いきなり笑い出した私の顔を不思議そうに見上げる銀楽と、ポカンとした表情の銀ちゃんを交互に見ながら、私はあの頃と今の幸せ両方を噛みしめていた。

懐かしさと暖かな気持ちが胸いっぱいに広がっていくのを感じながら。

銀楽の子守りをしてくれた銀ちゃんへのお駄賃は、ポケットの中で甘い匂いをさせながら溶け始めていた。




end.
 

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