memorial
□そして、続いていく幸せ
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今日は朝から変だ。
何が変かと言うと、銀ちゃんがだ。
ずっとそわそわしている。
落ち着きなく立ったり座ったりを繰り返しているかと思えば、今度は意味もなく窓を開けたり閉めたりする始末。
今はソファーでジャンプを読んでて落ち着いてるように見えるけれど、残念かな、上下が逆になっている。
銀ちゃんの異常な様子にツッコミを入れてくれるメガネは、ちょうど今買い物に行っててあいにく不在だ。
とりあえずは放置しているけれど、さて、どうしたものか。
いつもならうっとおしいと一撃入れて終わりだけど、今日はそうもいかないのは、銀ちゃんの奇行にはちゃんと理由があって、そして私がそれを知っているから。
今日は11月3日。
私の二十歳の誕生日。
そして。
―― ピンポーン
「……!」
聞こえてきたチャイムの音に、一瞬銀ちゃんの体がビクリと跳ねたのを私は見逃さなかった。
緊張した様子の銀ちゃんは、だけどもすぐに立ち上がって玄関へと向かう。
戸の一歩手前で立ち止まって深呼吸を一つ。
そうしてゆっくり戸を開けると、そこに立っていたのは――
「ヤッホー!」
……ヅラだった。
「何でよりによってテメェなんだァァァ!!」
「グハァッ!?」
「何がヤッホーだ!さっさと帰りやがれ!!」
「イヤ、待て銀時!今日はリーダーの祝いに来たんだ!」
そう言ってヅラが差し出したのは大量の酢昆布とうまい棒だった。
「おぉ、ヅラもたまには気がきくアルナ。」
「…ホラ、用は済んだろ。さっさと帰れよ。」
「まだこれで終わりではないぞ!今から俺がリーダーに心を込めて歌を…」
ガラガラ ピシャッ
ヅラの歌が披露されることはなかった。