memorial
□君さえ居れば。
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「銀さん、誕生日おめでとうございます!」
「おめでとう、銀さん。」
「…おう。」
次々とかけられる祝いの言葉に何とも言えない気恥ずかしさを感じつつ、つがれた酒を静かにあおる。
万事屋の下にあるスナックお登勢に集まったのはいつもの顔ぶれ。
この年にもなれば、誕生日なんてものは取り立てて喜ぶほどのことでもないし、ああ、また一つ年をとったのかぐらいにしか思わない。
それでも毎年こうして、自分の誕生日にはみんなが集まって祝ってくれる。
まぁ、結局最後はいつものドンチャン騒ぎになるのだが、そんな賑やかな中で自分の誕生日を過ごすのも悪い気はしない。
だけど。
これだけ騒がしいのに、さっきからどこか寂しさを感じるのはなぜだろうか。
イヤ、本当はもうとっくに気づいている。
騒がしいからこそ。
いつもうるさいくらいに元気だった少女の存在を嫌というほど思い出してしまう。
そう、当たり前のようにいつも自分の隣にいた少女の事を。
えいりあんはんたーになるという夢を叶える為、神楽が万事屋を、地球を出ていって3年。
もう、3年だ。
万事屋に、俺の隣に神楽がいない。
その空白に慣れたつもりでいたのに、こうしてふとした時にその存在を確かめるかのように隣を見下ろしてしまうのは、やっぱり慣れた"つもり"でいたからだろうか。
「銀さん、あんま飲んでないじゃないスか。」
カラオケでいつもの如く寺門通の歌を熱唱し終わった新八が、隣にドサッと腰かける。
「今日は銀さんが主役なんですからどんどん飲んで下さいよ。あっ、でも銀さんももう年ですし、前みたいにって訳にはいきませんかね。」
ニヤニヤと笑いながら俺のグラスに酒をつぐ。
「アホか、オメェ。俺はまだまだイケるっての。」
つがれた酒をグイッと一気に飲み干すと、途端に視界がぐらついて顔が紅潮する。
それを見て新八が苦笑しつつ、また空になったグラスに酒をつぐ。
「銀さん…」
「何だよ?」
「もう銀さんも年なんだから、あんまり無理しちゃダメですよ。」
「…テメェ、何さっきから人の事を年寄り扱いしてんだ、コノヤロー!まだまだ飲めるっつってんだろうが。」
「イヤ…まぁ、お酒の話だけじゃないんですが…」
「……あ?」
視線を落として新八はポツリと呟いた。
「……もう、3年なんですね。」