memorial
□斯くして、僕は彼女にハートを占領されました
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「どうかしたんですか、銀さん?」
「え、ああ…イヤ、何でもねェ…」
出来るだけ平静を装って答えたが、内心穏やかではなかった。
そんな訳ないと思いつつも再び神楽を盗み見ようとしたら、だけども今度はバッチリ目が合ってしまって。
恥じらうように一瞬だけ目を伏せるその仕草に、クラリと目眩がした。
自分の胸に手をやると、鼓動が早鐘のように鳴っている。
「………っ」
何コレ?
何だコレ?
「銀ちゃん…」
「なっ、何?」
急に柄にもなく緊張し始めた俺は、声が上擦ってしまったことにすら気づかない。
周りを見渡してみると、タイミングが良いのか悪いのか、いつの間にか新八は居間からいなくなっていた。
2人きりという状況がさらに緊張を煽る。
「あのね、銀ちゃん…」
薄く開かれた唇から赤い小さな舌が覗いて。
それから。
「大好きアル。」
極上の笑顔付きで囁かれたそれは、あまりに衝撃的すぎて。
俺はバカみたいに全身真っ赤になってその場で固まってしまった。
果たして、今の言葉は神楽の本音なのだろうか。
それとも。
単なる薬の効き目によるものなのだろうか。
その答えはわからない。
だが、ただ一つだけはっきりした事がある。
それは。
――男、坂田銀時。
本日、恋に落ちてしまいました。
end.