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□Whitest... 4
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空には一番星と月が浮かび上がり、夜の闇が少しずつ色付き始めていた。
「くそっ!!」
リチャードの意味深な言葉を軽視していた自分が恨めしい。
最近、走ってなかったせいか、少し走っただけなのに苦しい。
こんな事になるなら、もっと早くに気づけばよかった。
答えなんて最初から出ていたのだ。
「…間に合ってくれっ!!」
誰に言うわけではなく小さく呟いて、アスベルは自宅のドアを乱暴に開いた。
「やぁ、アスベル」
「…リチャード」
意外と早かったね、と微笑むリチャードを息を切らしながら睨みつける。
「お前…、ソフィに、」
「…アスベル?」
何をした、と聞こうとした時だ。
玄関からも見えるキッチンの扉からひょっこりとソフィが顔を覗かせた。
「ソフィ、お前、」
「アスベル、何で…」
「大丈夫かっ!!?」
がしっ、とソフィの肩を掴んで彼女に目線を合わせる。
「わたしは何ともないよ」
「でも、さっき電話口から…」
「あぁ、それは…、」
じーっと、リチャードを睨みつけるソフィ。
「リチャードがケーキつまみ食いしたから」
「…へっ?」
「だから、もたもたしてると僕が貰っちゃうよ、て言っただろ?」
相変わらずの流暢な優しい口調で言うリチャードに顔が引き攣る。
「…僕はちょっと出かけるよ」
じゃあね、と言ってリチャードは開けっ放しの玄関から出ていった。
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