「トリックオアトリート!!」
「…はっ?」

いきなり何だ、と思って読んでいた本から目を離せば目の前には満面の笑みのレイヴンが。

「…年考えてから喋りなさいよ」

そう言ってリタは読んでいた本に目を戻した。

「リタっち、つれなーい」
「何とでも言いなさいよ」

暇じゃないの、あっちいけ、と言えばちぇー、とつまんなそうにレイヴンは口を尖らせた。

「あっ、リタっち、お菓子持ってないとか?」
「はいはい」

呆れながら、おまけに溜息を零しながらリタはポケットを漁った。

(…あれ?)

今日のためにお菓子を5つくらい常備していたのに、その姿は見当たらない。

「リタっち、まだ〜?」
「ちょ、ちょっとは待ちなさいよ!!」

そう言って必死にポケットを漁るが、やっぱり見つかる気配はない。

(…思い出せ、あたし、)

たしか、今日の朝一番にガキんちょにたかられてひとつ。
その次に、パティーにいとつ。
そして、エステルとユーリにひとつずつ。

(あと一個…あっ、)

…思い出した。

先程、子腹が空いたからといって自分でつまんでしまったのだ。

(…や、やばい)

この事態を目の前のおっさんに悟られてはならない。
なぜなら、イタズラと称して何をされるか知れたもんじゃないからだ。

「…リタっち?」
「な、なによっ!!」
「…まさか、持ってないとか?」

その言葉にどう対応していいかわからなく、リタは口を噤んだ。

「ははーん、ビンゴだねぇ〜?」

じゃあ、イタズラだね、とレイヴンは上機嫌にリタに近づいた。

「…あっ、」
「なぁに?」

突然声をあげたリタを不思議に思って聞き返してみる。

「お菓子、あるわよ」

にぃ、と笑ってリタはもともと宿屋の部屋に置かれているキャンディをレイヴンに渡した。

「これでイタズラは無しね」
「ちぇー、つまんないの」
「用が終わったならさっさと…っ!!?」

出てけ、と言おうとした瞬間だった。
突然腕を引っ張られて、気付けばレイヴンの腕の中。

「ちょ、ちょっと…!!」

抵抗して押し返してみても、それは悲しく終わるだけで。

「やっぱ、トリックアンドトリートっつーことで」
「…はっ?!」

何言ってんだこのおっさん、と思った時には遅くて、首筋に走る小さな痛み。

「ごちそうさまでした〜」

何が起こったか理解できず混乱する頭で飄々と去っていくレイヴンを見た。

「…あっ、待ちなさい!!」

我に返ったリタは跡を付けられた首筋を押さえながらレイヴンを追いかけた。

















trick and treat

(お菓子もイタズラも)

(キミがくれるなら、)

(両方欲しい。)




end.



…+…+…+…+…+…

TOVのレイリタでした。
…リタっちがツンデレじゃないっ!!
よくよく考えたら、おっさんセクハラですよね(笑)





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