りゅうのあなで修業をしていたら突然肩を叩かれた。
何だ、と思って振り返ってみればそこには満面の笑みで手を出すコトネがいた。
「…何の用だ」
はぁ、とため息混じりに尋ねてみるが、アイツは笑ったまま。
「トリックオアトリート」
「…はっ?」
突然、言われた言葉に俺は眉をしかめた。
そういえば、今日はハロウィンだったな、と思い出す。
あまりイベントなどに興味がない俺はもちろん、お菓子なんて持ち合わせていない。
というより、甘いものが苦手なのだ。
「悪いが、持っていない」
そう言えば、ちぇー、とアイツは頬を膨らめた。
「カナデなら何かくれると思ったのに」
「俺はお前の非常食袋じゃない」
まったく、と言ってもう一度溜息をついてやる。
「…あっ、」
「今度は何だ?」
しばらくしてからアイツは思い出したように声をあげた。
「あたし、カナデにイタズラしないと」
「…あぁ、そうだな」
お菓子が貰えなかったらイタズラをするというのがハロウィンという行事だ。
しかし、こういうのが大好きそうなアイツにしては珍しい答えが返ってきた。
「でもね、あたし…」
イタズラ考えてなかった。
てへぇ、とごまかそうとするコトネに対し、再び溜息。
「お前なぁ、」
「だって、カナデなら何か持ってそうだったんだもん」
「あいにく、こういう行事には興味ないんで」
悪いな、と言って俺は出口に向かおうとした。
「あっ、」
「どうしたの?」
やっぱり、出口に向かうのをやめて俺はコトネに歩み寄った。
「トリックオアトリート」
「…へっ?」
俺がそう言って手を差し出せばアイツはマヌケな顔をして、俺の顔と掌を交互に見つめた。
「トリックオアトリート、と言った」
そう言えば今度は驚いたような顔をして目を見開いた。
「ごめん、持ってないや」
「…だろうな、」
人にたかりに来るくらいだからな、と言えばアイツはバツが悪そうに笑った。
「じゃあ、イタズラだな」
「えっ?」
俺がそんなことを言うなんて思ってなかったのか、キョトンとした顔をするコトネ。
そんなアイツの手を引いて額に軽く唇を押し当てた。
「じゃあな」
そう小さく挨拶を交わして俺は出口に向かった。
「え…っ、ふえぇぇっ!!?」
祠の外まで届いたアイツの叫び声を聞いて、その表情が目に浮かぶようで笑えてしまった。
(…たまにはイベントもいいかもな)
そんな風に思いながら、俺はフスベシティーをあとにした。
trick or trap
(予想外のイタズラと、)
(罠にはまる。)
end.
…+…+…+…+…+…
HGSSでツンデレライバル×のーてんき主♀でした。
最近、このふたりが可愛すぎる←
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