☆たからもの☆

□狸と狐
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〜ついに訪れた俺のターン〜


部屋に通されると、セッツァーはソファを我が物顔で陣取った。
「ったく逃げ回ったと思えば攻撃してくるわ…とんだじゃじゃ馬だぜ、あんた。」
セリスはすっかりふてくされた様子で部屋の奥で壁にもたれ掛かっている。
「いい加減利子も高く付くってもんだ。なぁセリスさんよぉ?」
苛立ちながらテーブルに足を乗せて無言のセリスに凄む。
「…で?利子はおいくらかしら?」
淡々と応えるセリスに動揺の色も、もとより反省の色も見られない事からむっとしてくってかかりそうになるセッツァー。
しかしここでカッとなっても意味はない。
一拍のち、いつもの皮肉めいた笑みを浮かべてセッツァーは言った。
「なら体で払ってもらおうか?」

「解ったわ。」
セッツァーの予想に反し、セリスはきっぱりと答えた。
「へ?」
思わず間抜けな声を漏らして視線をあげる。
「勝負は勝負…よね。」
言い聞かせるように呟くとゆっくりとこちらへ歩み寄るセリス。
「セリス…?」
硬直してその場から立ち上がることもできずセッツァーは小さく呟く。
その間にもセリスは近付いて、ソファまでやってくると心音が聞こえやしないかという距離に体をくっつけるようにして座った。
「!!」
言葉も出ず、息の仕方すら忘れ、セッツァーは混乱を悟られぬよう意識しながら慎重に慎重に息を吐き出す。

落ち着けっ、俺っ!

視線を合わせないよう空を見つめ、伝わる体温にすぐそばにいるセリスを感じ、笑みがひきつるのを感じながらも必死で平静を装う。
セリスがこんなこと言うはずがない。

これは罠だっ!

しかしどんな罠なのか思案を巡らす暇もなく、セリスの指がゆっくりと伸び、セッツァーの頬に触れる。

ふぐぅわぁっ!

意味不明の叫びを寸でで飲み込みながら、全身に走る妙な痺れに耐える。
熱くなった頬にセリスの白いしなやかな手は冷たくて、嫌でも存在を知らしめる。

いやいやまだ19のガキじゃねぇか、何やってんだよ俺!

セリスの指がゆっくり頬をなぞり、顎を捉えると自分の方へ顔の向きを変させる。

見まいとしていたセリスの顔がすぐ目の前にあり、セッツァーは完全に視線を外すタイミングを失った。

見上げる瞳は少し戸惑いの色を残し、誘うように開いた唇は瑞々しく美しい薔薇色
頬はうっすら朱が差していて白い肌をよりいっそう引き立てる

これは…ありだ…
19だろうとあり!
いやしかし…ありだ

吸い寄せられるように魅入ってしまう美しさがあった。
ゴクリと息をのむ。

鼓動は痛むくらい激しく鳴り響き壊れそうなほど。

「ほっ…本気か?」

やっとの事で絞り出した問に、セリスはゆっくり顔を近づける。

後少しで触れるであろう唇が目前に迫りセッツァーは瞼を閉じた。


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