Titles of limitation in autumn

□◆落ち葉の先で
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絡み合う、二人の腕。
腕を組んで歩いて、歩いて。

黄色と茶色の落ち葉の雨に二人そろって攫われてしまいそう。



***scene1・女の子ふたり***

 「あとはエリクサーと・・・そうそう、オーガニクスが毀れちゃったの。だから代わりを用意しないと・・・」
石畳の河川沿いを歩きながらセリスは用意していたメモを開いた。
時刻はちょうど正午を過ぎたくらいで本来ならば心地よい秋の太陽が降り注ぐ時間帯にも関わらず、本日は生憎の曇り空。
それでも、若い女が二人揃えばそこだけ花が咲いたかのよう。
無情にも体温を奪いに来る冷たい空気から身を守るかのようにティナはセリスの腕に自身の細腕を絡ませ、珊瑚色の唇を開いた。
いや、普段は珊瑚色なのだが今日に限っては乾燥した空気に負け、少し白っぽく痛々しい。
「なにがいいかなあ?エドガーが沢山お金渡してくれたからちょっとくらい高くても平気よ」
ティナは淡い翡翠色の大きな瞳で少し上にあるセリスの顔を覗きこむとにっこりと微笑み、財布の入った鞄をぽんぽんと叩く。
「うっそ?いくら?」
セリスもまた美しい容姿を引き立たせる深い海色の瞳を瞬かせると、少し上擦った声を上げる。
「えーっと・・・ほら、こんなに」
がさごそとティナが鞄を漁りだすと、紙幣でたっぷりと太った財布が姿を現す。
「うわあ、エライ気前がいいわね。大蔵大臣もこの不景気に気がちがえたかしら」
その発言にティナが“ぷっ”と噴出したので、セリスもつられて笑い出す。その間もティナはセリスの腕に絡み付いている。
「そんな風に言ったら怒られちゃうわ。っていうか、聞こえちゃう!・・・ねぇねぇ、わたし、買い物済んだらあっちの通りに行きたい」
ティナが指す方向は武器防具専門の通りとは反対側。
「賛成っ!私、なんか小腹すいてきちゃった」
「ふふ、でしょっ! さっきすっごく美味しそうな香りがしなかった?」
「甘いやつ。角の店でワッフル焼いてた」
「そう!それっ」
「あぁ、ティナのせいで別腹出現したわ。先に行っちゃおうか?」
「怒られないかな」
セリスにぺったりとくっ付けていた身体を少し離すとティナはちらっと後ろを盗み見る。
「・・・どう?機嫌良さそう?」
「んん〜・・・落ち葉が邪魔で・・・あれ?なんかロック変な顔してこっち見てるわ」
「へ? それ元々じゃなくて?」
さらりと毒舌を垂れるとセリスもまた後ろを振り返る。
上品な余所行きの笑顔でこちらに手を振るエドガーに軽くはにかんで手を振り返すと、なにやら神妙な面持ちのロックがこちらへと向かってきた。

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