FF6 15_Title_Novel -tragic love-

□6◆平行線
1ページ/2ページ

Nr.6 平行線



 採石場から街道外れの町を繋ぐ線路沿いをただひたすらに歩き続けた。


 丸腰で飛び出してきたにも関わらず、旅を続ける過程で次々と増えた荷物が肩に食い込んだが、
セリスは弱音を吐くどころか表情一つ変えることは無かった。

 「少し休もうか」
振り返って声をかけたロックは返事を聞くことも無く荷物をその場に放り投げた。
「大事無い。先を急ごう」
「俺が疲れたんだ。荷物降ろせって」
セリスから無理やり荷物を引っぺがすとロックは放置された貨車とボタ山の陰に腰を下ろし、彼女を促す。
ロックはいつだってこうである。
その強引さに初めは戸惑ったセリスだったが、長い二人旅でそれにもすっかり慣れてしまっていた。

 荒れた土地に這う長い長い線路、二つの平行線が地平線の先まで続いた。
セリスは水筒に口を付けると、乾燥して張り付いた喉に水を流し込む。
「あと、どれくらいかかる?」
陰に居るにも関わらず照りつける日差しに目を細めながら彼女は潤った喉から声を出した。
その濡れる唇に一瞬目を奪われたロックは彼女がなにを喋ったかなど聞いてはいない。
いや、聞こえてはいるのだけれど、脳に伝達されても理解しようとしないのだ。
「え、あ。ごめん。どれくらいかかるかって?」
「ああ」
彼女の冷静な視線が自分の一瞬の邪な気持ちをすべてを見透かしているようで、
ロックは居たたまれなくなり遠くへ目をやった。
「半日・・・くらいかな。線路辿って行けばいいだけだから、夜でも歩けるだろ」
うまく喋れた。そう思って胸を撫で下ろす。
「半日か・・・」
そう呟くとセリスは無意識に脚を摩った。
「つらいか?」
「いや、体力には自身がある」
「頼もしいね〜」
「途中で倒れたら、担いで運んでやる」
「そ、それは勘弁かも・・・」
「でしょうね」
そういってセリスはくすりと微笑んだ。
素っ気無い態度でする他愛の無い会話の中で垣間見える彼女の素顔にロックは心躍らされる。
同時に、本当はもっと可愛らしい女の子であるはずの彼女が軍に身を投じなければならない境遇を哀れんだ。
「笑うと、かわいいな」

「へ??」

突然の発言にセリスは声が裏返り、そのあまりの動揺ぶりにロックは「ぷ」と噴出したかと思うと腹を抱えて笑い出した。
セリスは怒りからか、はたまた照れからか頬を上気させ
「からかうな」
と一言呟いた。
しかし、今のロックにはそれすら愛らしい。



 「さぁて、行くとしますか」
ロックは立ち上がるとセリスに手を差し伸べ、彼女もまた何の躊躇いも無くその手を握った。


 目の前に続く二対の軌条の様に決して交わることなど無いと思っていた二人の関係は、少しずつ変化を始めた。




fin.
あとがき↓
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ