FF6 15_Title_Novel -tragic love-

□4◆ガラス越し
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Nr.4 ガラス越し


蒸気機関車が通り抜けるたびにビリビリと振動する窓の外は相変わらずの景色で、
どんよりと低い空には帝国空軍の最新機・スカイアーマーが飛び交う。
粉塵がびっしりと張り付いたガラス窓は、この機械の街の景色を更に汚れ、擦れさせた。
ガストラ帝国初の女将軍にして魔導を操るセリスは無機質な造りの長い廊下に足音を響かせた。
通り過ぎる度に敬礼をする兵士の存在すらうざったく感じるのは、
深く被られたヘルメットからちらりと覗く視線が敬意を表している様には思えないからだ。

目的地へ赴く前に、その人物は姿を現した。
これから嫌でも顔を合わせなくてはならないのに、
こんなに早く現れてくれるなとセリスは思い小さな溜息がでる。

「おや?これはこれは、セリス将軍ではありませんか。ご機嫌麗しゅう」
真っ赤に引いた紅が含みをもって動く。
「貴様、1300からの会議をなぜ欠席した。お陰で私が言伝役だ」
「ごちゃごちゃと五月蝿い小娘だね。そーんなつまらない会議にこの僕が出席するわけがないだろう」
つんと顔を背けるケフカにセリスは相手にするのも馬鹿馬鹿しいとばかりに続けた。
「レオ将軍からの言伝だ。野戦病院が満床だそうだ。作戦を変えろとの命令がでた」
「ちッ。そんな使えない奴らは野たれ死ぬばいいのに」
「貴様の部下だ。丁重に扱え」
「ふん、歩兵なんてただの捨て駒だよ」
セリスはその言葉に一瞬眉根を寄せるが、にやりと微笑むと思い出したように口を開いた。
「貴様も偉くなったものだな。元陸軍本部第四部隊ケフカ・パラッツオ、別名クラウニッシュ・オッド。
道化宛ら尻に火を付けて逃げ出したそうだな」
その言葉を耳にするとケフカは白粉を塗った顔を真っ赤にし、口をわなわなさせ奥歯を噛み締めると唸るように声を出した。
「小娘がッ!どこでそれをッ」
彼の血走る目を見やると、セリスは「勝った!」とばかりにふふんと鼻を鳴らし踵を返した。
「ああ、そうだ、」
彼女は振り返ると再びにやりと笑う。勝者の勢いは止まらない。
「貴様のお気に入りは見つかったのか?」
「お、お前には関係ないねッ」
「そうか、残念だ。フィガロに潜伏しているとの情報が入ったのだが・・・皇帝陛下は今月中に結果が出せなければ、この件は私に任せると仰った」
赤くした顔がどんどん青ざめていくさまを、さも楽しそうに見ながらセリスは続けた。
「あら、今日は30日だ。時間がないな?オッディーよ」
「にッ、二度とその呼び名を口にするなッ!」
おおこわいとばかりに両の手を上げるとセリスは元来た道を歩き出した。

こんなに気分がいいのは久しぶりだ。
セリスは歩きながらふと窓を覗くと、いつもの風景が広がった。
でも今は、このくすんだガラス越しの世界も悪い夢だと思えるような、そんな気がした。



fin.
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