☆たからもの☆

□狸と狐
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〜復讐の時〜


「ったく負けた途端に逃げ回りやがって。くそっ!今度こそ逃がすかよ。」

腕を組んで苛ただしげに足をならす。
場所は飛空挺内に割り当てられたセリスの部屋。
ちょうど曲がり角になっていて、向こうから自室に戻ろうとセリスがやってきても見えない位置にセッツァーは身を潜める。

奥まった場所にあり、一番広いこの部屋は、元はといえばセッツァーの部屋だった。
しかしポーカーでセリスに負け、ぶんどられてからは遊技場の隅で生活する日々…。
その後躍起になってけしかけた勝負で勝ったまではよかったが、以来セリスには逃げられっぱなしという…まぁ、なんとも無様な状態を打破するべく、待ち伏せという手段に打って出たのだ。

ふっと耳をそばだてセッツァーは表情を強ばらせる。

(来やがったな)

近づく足音で慎重に距離をはかる。
あと少し…
じりじりと体制を変えて待ち構える。

今だっ!

だんっと踏み込むセッツァーの足音が響く!

次の瞬間、伸ばした手をは空を掴み、ひらりと身を返したセリスが音もなくセッツァーの懐へ入り込む。

体術に優れたセリス相手では、最初に捕縛できなければ勝ち目はない。
しかしセッツァーだって負けるわけにはいかなかった。

続いて放たれた拳がみぞおちに打ち込まれるより速く、セッツァーは後ろへのけぞりながらセリスの脚を払いのける。

勿論常勝将軍がそんなことに動じるはずもなかったが…

「っ!」

足元にバラまかれたダイスに気を取られ、バランスを崩して前のめりに倒れたセリスを胸で受け止め、セッツァーは間髪入れずにつかんだ腕を後ろに回して捻り上げた。
「あぅっ!」
セリスが呻く声にセッツァーは皮肉めいた笑みで冷たく言い放った。
「俺様相手に踏み倒そうってのは良い度胸だぜ?セリス。」
肩で息をしながら、セリスは転がったままのダイスを悔しげに睨み、応えた。
「イカサマとは汚いわね。」
「こんな狭いところで爆発物投げるわけないだろ?」
ふっとセリスが笑って空いている手を挙げる。
「解った、降参よ。」


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