☆たからもの☆
□barely
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何度も往復した砂漠の旅だが、今回はいつもと違っていた。
同行者がいるのだ。しかも、女。
俺が後ろを歩く彼女を振り返ると、彼女は俺に向かって、いきなり叫んだ。
「なんで、こうも歩きづらいんだ!」
突然の乗り手の癇癪に、彼女を乗せたチョコボが驚いたのか、体を大きく揺らした。
砂漠に入ってからというもの、彼女の機嫌は常に最悪だった。
私は暑さに弱いから、と言って口を開けば文句ばかりだ。
「…黙ってりゃなあ…」
俺は思わず小さく呟いて、ため息をついた。
彼女はとても美しかったのだ。
すらりとした長身に目の醒めるような鮮やかな金髪。大きな目は切れ長で宝石のように青く美しい。
しかし、その内面は気位が高く、わがままで、感情の起伏が激しい。
そう、まるで砂漠の女神のような女だった。
「おいおい、チョコボが怯えるだろ。大きな声だすなよ」
俺がそう言うと、彼女、セリスは少しだけ大人しくなった。
日焼けしたくないらしく、黒い頭巾をすっぽりかぶっている為、表情は目元しか見えないが、頭巾の下では膨れ面をしているだろう。
「ああ、もう暑くて嫌になる。汗がベタベタして張り付くし、喉が渇いてたまらない。いつになったらナルシェに着くんだ?」
彼女は頭巾をずらして皮袋の水を口に含んだ。
水を一度にたくさん飲むと、体温が下がり、周りの高い気温に合わせるため不要な体力まで削られてしまう。そのため、俺は水は口に含んでから少しずつ飲み込むように、しつこいほど注意していた。
今のところ彼女は俺の忠告を守り、一口ずつで我慢している。
頭巾をずらしたところから見える、かすかに上下する白い喉に視線が惹きつけられるのを感じながら、俺はわざと呆れたように言った。
「あのなあ、今朝フィガロを出たばかりなのに、まだ着くわけないだろう。砂漠を抜けるのにあと二日はかかるぞ」
「んんー!?」
彼女は口に水を含んだまま、声にならない声で叫んだ。