名言&台詞&言の葉

□面白いシーン in彩雲国物語
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【はじまりの風は紅くp11〜13】
秀麗:「誰が何の用で私に会いにくるか知らないけど、事前にひと言あってしかるべきじゃない?急に呼び出すなんて…おかげで予定が狂ったわ。狂いまくったわ」
ぐっと拳を握りこむと、秀麗は勢いよく静蘭をふり仰いだ。その胸にがしっとしがみつく。
「どおしよ静蘭(せいら)ぁぁんっ!今月もまた赤字になっちゃう。このあとすっごいワリのいい仕事があったのに全部パァよ、パァ!今月は絶対お米が買えると思ってたのにぃ。また麦なんて…麦なんて…麦なんてぇぇえっ!!あの麦の真ん中に走る一の線!米との差をみせつけられるようなあの一の線に今月も『俺は米じゃないゼ』って嘲笑われるんだわ。あーもう信じらんない信じらんない!その客一生恨んでやる〜ぅ」
静蘭:「お、お嬢様、誰もそんなこと言いませんから。麦はしゃべりません」
静蘭は人目を気にしてわたわたと辺りを見回した。往来のド真ん中で騒いでいるのだから当然だが…道ゆく人の視線が冷たい。
「大丈夫ですよ。私も内職を増やしますから。こないだの大風で飛んでいった瓦の修理は早くしないと雨が降ったとき大変ですし、桶代も馬鹿にならないですからね。瓦だけ買えれば修理は私がやりますから、そのぶん浮きますよ。壊れた格子もお城から見繕ってもってきますし…ね、泣かないでください。私は麦のご飯大好きですよ。栄養ありますし」
「ふええええん。静蘭いつもいつも迷惑かけてごめんねえ。うちのバカ父がもっとしっかりしてたらこんなことには」
「そんな、お気になさらずに」
「お給料も払えないのにずっとうちにいてくれるし…他はみんな出てっちゃったのに。れっきとした朝廷の武官に、酒楼の帳簿付けとか、書の代筆とか、商家の使いっぱしりとかさせてるの、きっとうちくらいよう」
「…」
それは多分その通りだ、と静蘭は思った。
「静蘭一人なら充分食べていけるくらいの禄もらってるのに、うちにいるから家の維持費とか生活費とかで全部消えてっちゃうし…なのに、うちのことは気にしないでもっといい家に仕えていいのよって言えない私たち父子(おやこ)を許してえぇ。でもでも、本当にいい勤め口があったらね?私たちにはかまわないで」
「お嬢様」
静蘭は苦笑を浮かべて秀麗の言を遮った。
「そんなことは気にしなくていいんです。私は出てけと言われるまでおそばを離れるつもりはありません。迷惑などとはちらとも思っていません。むしろようやく恩に報いることができて嬉しいくらいです」
「恩なんて…っ」
「十三年前、素性もしれぬ私を拾ってお邸に置いてくださったご恩は一生かけて返そうと心に決めていました。ですから、お嬢様方が気に病まれる必要はまったくありません」
「…せいらあぁぁん…」
くしゃ、と秀麗の顔が再び歪んだ。
「あーもーなんでうちはこんなに微禄なのよぉぉう!位だけはやたら高いくせにもうイヤぁ━━━っ!!」
「…」
秀麗の背中を撫でながら、静蘭も胸中しみじみとその意見に頷いた。
、 、
(…本当に位だけは高いんだが…)

【はじまりの風は紅くp24】
霄太子は二言はないかなどと訊いたりはしなかった。あると言われたら困る。

【はじまりの風は紅くp31】
「これではいかん。ここはひとつ、わしら老骨が骨を折ろうではないか!」
 霄太師の言葉に、他(ほか)の二人は眉(まゆ)を寄せた。──老骨が骨を折るとは、何ともイヤな表現だ。

【はじまりの風は紅くp32】
「じゃろう?ならばわしらでなんとか、運命の出会いを用意するのじゃ」
 またまた二人の老臣の眉が寄る。──運命の出会い?
 どこがいいかのう、と首を傾げ、霄太師は紙の上に筆をすべらせる。
「──よし、ここはひとつ、梅林の下で梅茶と梅饅頭(まんじゅう)で茶会というのはどうじゃ!?」
「馬鹿(ばか)か!」
 霄太師の手から筆をもぎとった宋太傅は、梅林、梅茶、梅饅頭の文字に大きくバツを書いた。
「それのどこが運命の出会いだ。そこらの老人会と変わらんだろうが!」
 茶太保も呆(あき)れたように首を振(ふ)った。
「まったくだ。おまえはその歳(とし)まで独り身だから、若い男女の求める運命の雰囲気(ふんいき)というものがわからんのだよ、霄。まったくだめだめだ。ここはやはり劇的な感じで」 ……こうして朝廷を束ねる老臣たちの論議は明け方まで展開された。
 あまりの白熱ぶりに、女官たちもお茶を運ぶのを控(ひか)えるほどだった。しかしその論議の中身が「運命の出会い」であったことなど、誰一人(だれひとり)として知る由(よし)もなかったのだった。
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