政宗様と成実くん
□ちょっと京都行ってくる
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伊達軍の皆様へ
京にいる幼馴染みとちょっと世界をぶっ壊しに行ってくるので暫く休業します
刀の手入れは成実に頼んで下さい
大丈夫、毎日私の仕事見てる成実ならやれるって信じてる!
追伸
私はただ壊すだけだ、獣の呻きが止むまでな…!
「what?」
俺の大事な大事な刹那が、中二な貼り紙を残していなくなりました。
「…旅行?」
貼り紙を見て、なにがなにやら考えが追い付かない俺は、隣に立つ梵にそう尋ねてみた。
「世界ぶっ壊すとか書いてあるぞ。どう考えても旅行じゃねぇな」
「だよね…」
そもそも世界ぶっ壊すって、なに?俺、刹那が世界征服らしきことを企んでるなんて聞いたことない。
「旅行じゃないなら、家出…とか?」
「あぁ、恐らくな。そんなに成実のことが嫌だったなんてな。一言言ってくれれば俺がなんとかしてやったってのに…気付いてやれなかった俺は奥州筆頭として失格だな…」
「なに悲痛な面持ちで洒落にならねーこと言ってんだよ!刹那が俺を嫌になる訳ないだろ!」
「Sorry、最初からお前のこと嫌がってたな」
「そんなことねーし!あれ照れてるだけだから」
刹那の家の前で奥州筆頭とその重臣が騒いでいるのを、民が興味深そうに見ている。お二人共とうとう振られたのか、ついに振られたみたいよ、なんて言葉がちらほら聞こえてくるけど、俺は振られてないから!
「ちょっと皆さーん!俺は振られてないからね!振られたの、梵だけだから」
「Ah?どう考えても俺よりお前のほうが振られる確立は高ェだろ」
「毎日毎日会ってて、既に通い婿みたいになってる俺が振られるはずないでしょ」
「毎日顔見てるとな…飽きるんだぜ?」
「俺は全然飽きないけど。むしろ日毎に刹那を好きになってくけど」
「成実、」
「な、なんだよ」
「俺達、刹那の眼中に入ってねぇぞ」
「現実を見せる梵ごと奥州をぶっ壊したいよ俺は。暴動起こしていい?」
「お前最近発言が危険すぎるぞ!どうした成実!」
うるせえ。刹那がいなくなってちょっと反抗期なだけだよ。
「刹那〜…」
「泣くなよ…」
女を泣かせても泣かされたことのない俺が、ちょっと姿が見えなくなっただけでこんなに悲しくなるなんて…帰ってきたら俺をここまで本気にさせた責任をとってもらわないとね。
(でも世界ぶっ壊すって…)
(獣の呻きって…)
((……大丈夫、それでも愛してる))
(真似すんなよ、梵)
(こっちの台詞だ。俺の刹那だって何回言ったらわかるんだ?)
(ふざけんな、俺の刹那だって言ってんだろ!)