みじかいの

□時には恫喝も必要
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「刹那…少し相談があるのだが…」


自室の机で報告書を纏めていると、芥川がそれはそれは困った顔をして部屋に入ってきた。彼の困った顔を見て、私は中也さんに言う。


『だってよ中也さん。男の悩みは男が聞くもんだよ』

「俺に押し付けんな。お前ェに相談したいって言ってたろーが。なぁ芥川」

「僕は刹那に相談したい」

「はい、指名入りましたぁ〜」

『後輩の悩みを聞いてあげるのも先輩の仕事ですよ?職務怠慢反ターイ』

「僕は刹那に相談したいっ…」


羅生門が頬を掠めた。お、おぉそうか、そんなに聞いて欲しいか。ならばその悩みを私にぶちまけるといい。私はその悩みに全力で答えよう。さぁおいで、と、両腕を広げ、聖母の如き微笑みを称える私に芥川は悩みを話始めた。


「僕は刹那が好きなのだが、どうにも上手く想いが伝わらない。どうすれば刹那の恋人になれるのか教えて欲しい」


至極真面目に、真剣に悩みをぶちまけてきやがった。


「すげぇぶっちゃけてきたな…教えてやれよ刹那」


中也さんがにやにやと面白そうに私に言った。


『ぇえ?…ちょっとなに言ってるのかわかんない…』


て言うか本人にそれ聞く?聞いちゃう?いや聞かないでしょ。それを聞かれた私はどう答えればいいの?逆に教えて欲しい。


「どうすれば僕は刹那の恋人になれる…」


やめて、そんな悲しい目で見ないで。捨て犬、捨て猫は拾っちゃいけないって広津さんに言われたんだから!


『どうすればって…わかりません!エヘ♡』

「何故だ…何故教えぬ!」

『いや別に芥川のこと、そういう風に見たことないし…』

「有り得ぬっ…!」


芥川は信じられないと言う顔をして、机をバンバン叩く。子供か貴様。大体、自分が好きなんだから相手も同じはず〜、とかどんな思考してるの?初心者?恋愛初心者なの?


「んじゃ、お前の好きなタイプってどんな男なんだよ?」


これまた中也さんが面白そうに尋ねてきた。
好きな男のタイプ?


『一途で、たまの浮気なら許してくれる人』

「タチ悪いわ!」

「う、浮気くらいなんとも…っ!」

「無理すんな芥川ぁああ!」

『あとお風呂が嫌いな人はちょっと…』

「っ!!」

『体弱い人も…』

「…っ」

『あと、』

「もうやめてあげてぇぇ!芥川のライフはゼロよ!!」


芥川が沈んだ。沈没した。中也さんが必死にフォローするが、芥川からの返事はない。


『恋愛ってのは振られる覚悟を持ってしないと。よく振られて相手を刺したとか殺したとかあるじゃん?』

「あるある」

『そういうことするから振られるんだってなんで気付かないんだろうね?』


そんな奴とは1秒でも早く別れないと。しかしそういう奴は話を聞いてくれない。無事に別れられてもストーカーと化す場合もある。


「まぁ…失恋すると女は3日で忘れるが男は3ヶ月は引き摺るっていうしな…仕方ねぇ、俺が教えてやる」

「いえ、それは遠慮します」

「お前刹那の恋人になりてーんだろ!?好きなんだろ!?刹那とあんなことやこんなことしてーんだろ?」

「それは正直すごいしたいです」


正直だな。欲望の塊か。


「だったら友達だなんて温い関係はやめるくらい言いなさいよ!今から恋人だくらい言ってみなさいよ!女はね、ちょっと強引に迫るくらいが丁度良いの。壁ドンして無理矢理唇奪っちゃうくらいやってみせなさいよ!!」


中也さんがお嬢様言葉になった。芥川は衝撃を受けている。いや、それやられても私は落ちないから。そんな簡単に落ちないから。芥川は決心したような顔をして立ち上がり、私に向かって歩いてきた。後退りする私と、止まらない芥川。いつの間にやら壁まで追い込まれてしまった。


「お前が好きだ、刹那」


逃げようにも両脇を塞がれて逃げられない。


「僕のものになれ。ならぬのなら…」


彼の背後で羅生門がチラつく。


「ならぬのなら殺す」

『えっ…あの……え?…はい…』








時には恫喝も必要
(恫喝告白に中也さんはドン引きしている)





『中也さんっ』

「GOOD LUCK!」


なにいい顔して親指たててんだよ!へし折ってやろーか!?







(とりあえず接吻から…)
(まだ早い!)

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