みじかいの

□これも我が策のうちよ
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「くだらぬわ」


開口一番、元就は鼻で笑い、そう言い放った。

3月14日、ホワイトデー。先月義理と言う名の本命チョコレートを元就に献上した。寄越せと言うから仕方なく、だ。別に元就が好きだからあげた訳じゃないからね!あげようと思って用意はしてたけど、寄越せって言うからあげただけだからね!なのでお返しを催促したらバカにしたように笑われたのだ。解せぬ。ホワイトデーは3倍返しが基本だろ。くだらぬとはなんだ!


『チョコレート催促してきた癖にお返しもなしか!』

「ふん。お返し目的の気持ちが込もっておらぬチョコレートを渡すような愚か者に返すものなどないわ」

『世間一般は3倍返しが常識だろ!』

「世間と我は違う。我の常識は我が決める」

『何処までも自分勝手だなあんたは』


くそっ!元就なんかにチョコあげなきゃ良かった!元親や佐助や幸村はちゃんとお返しくれたのに!でも好きだバカヤロー!佐助のお返し、手作りのマドレーヌだったからね。少しは佐助を見習えバカめが!でも好きだ!私は時々思う、なんでこんな自分勝手な男に惚れてるんだろうって。


「大体、バレンタインもホワイトデーも本来の趣旨から外れたイベントになっているだろう。製菓会社の陰謀に踊らされる我ではない。それになにが3倍返しが常識だ。そんなもの女の常識であって、貰ったもののお返しは半返しが基本だ、バカが」

『御祝いじゃないじゃん…』

「ハッピーバレンタイン、と言うであろう」


なにがハッピーなのか知らないけど、ハッピーって言うくらいならやっぱ元就の言うように御祝いなのだろうか…


『じゃあ、半返しでいいよ。なんか頂戴』


催促すればジロリ、と睨まれた。


「しつこい女よ…」


分厚い小説本を片手に椅子から立ち上がる。うるさくし過ぎたかな。元就から貰えるならなんでもいいんだけど。


『元就、』

「貴様のようにしつこい女にはこれで十分よ」


悪口叩きながら、元就が私のおでこにちゅーをしてきた。え、ちゅー?…ちゅーってなんだ、キスだよ、キス。元就が私のおでこにキスしたんだよ。………キス!?でこちゅー!?


『…っ…!』

「ようやく静かになったか」


元就にキスされたおでこを押さえて、自分でもはっきりとわかるくらい顔に熱が集中する。ヤバい、ヤバイ、やばい!惚れた男からおでこにちゅーのお返しとか、それもう半返しじゃないから!3倍以上のお返しだから!


『も、元就…』

「何ぞ、」

『やっぱ好き…』


思わず、告白してしまった。







これも我が策のうちよ
(元就が嬉しそうに笑ったのを、私は知らない)



「知っておるわ、バカめが」

『あれ?元就照れてる?付き合っちゃおっか』

「だが断る」





(なんで!?)
(貴様と付き合うかどうかは我が決めることよ)

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