みじかいの

□校舎の3階から愛を叫ぶ
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「あー…」

「なに?さっきからウザい」

「俺、もうダメかも…」


伊達成実、18歳。高校3年。現在、隣のクラスの女の子に絶賛片想い中。なにがダメかって?俺、失恋するかもしれない。


「好きだって言えば?」

「フラれるのわかってて告れって?どんなドMだよ」

「けじめって意味でさ。そろそろ新しい恋してもいいんじゃね?」


島 左近ことさっちゃん(って言うと怒り狂うんだよ)がパチスロ攻略本を読みながらそう言う。左近、お前聞く気ないだろ。獣王はサバチャンが〜、じゃねーよ。高校生は入店禁止だろ、自重しろ。


「あれ、絶対デキてるよ」

「成実の勘違いじゃねーの?」

「…だったらいいな」


隣のクラスの刹那。俺の、好きな人。恋したきっかけはなんてことない。1年のとき、同じ委員会で仲良くなって好きになった、そんな、ありきたりな話。でも、最近その刹那と、従兄弟の梵こと政宗の仲が良い。二人一緒にいるときの空気がピンク色。どう見ても恋人同士が醸し出すそれと同じです、本当にありがとうございました。


「俺の情報では刹那ちゃんと政宗が付き合ってる、なんて情報はない」


好きな人はいるみたいだけど。と、読んでいた本を閉じて俺を見ると、にやにやと笑いながら続けた。


「とりあえず告ってみ?絶対上手くいくから」

「なにを根拠に…大体お前の話だと好きな人いるんだろ?」

「その好きな人が成実だったら?」


まさか、そんな訳、ない。だって刹那は俺をただの友人としてしか見ていない。


「俺が保証する。焼きそばパン賭けてもいい」

「俺も保証してやる」

「梵、どっから湧いた?」


俺が失恋するかもしれない原因の梵に保証されても嬉しくない。


「とにかく、告らなきゃなにも始まらねーだろ」

「ほら、丁度刹那ちゃんが校庭に」


言えよ。
梵と左近の目がそう言ってる。…そうだよな、言わなきゃ始まらないよな。フラれたっていい。刹那に、好きだって伝われば。


「………」


校庭にいる刹那が、俺達に気付いて手を振ってきた。梵と左近は手を振り返す。俺は一つ深呼吸をして、窓から身を乗り出して叫んだ。


「刹那ァァァッ!!好きだぁぁぁっ!!」







校舎の3階から愛を叫ぶ
(そこから告るのかよ!)



「俺の彼女になって下さァァァいっ!!」


梵と左近が口を開けて俺を見てる。刹那も驚いた顔で俺を見てる。刹那が、笑った。


『私もー!成実が大好きーっ!!彼氏になって下さーいッ!!』

「「「……マジで?」」」


刹那の返事に、三人の声が重なった。





(Unbelievable…)
(マジかよ…)
(保証するって言ってたのに、なんで驚いてんだよ)
(いや、マジで成実が好きだとは思わなくて…)
(やべー…彼女できちゃったよ)
((成実、爆発しろ))

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