みじかいの
□校舎の3階から愛を叫ぶ
1ページ/1ページ
「あー…」
「なに?さっきからウザい」
「俺、もうダメかも…」
伊達成実、18歳。高校3年。現在、隣のクラスの女の子に絶賛片想い中。なにがダメかって?俺、失恋するかもしれない。
「好きだって言えば?」
「フラれるのわかってて告れって?どんなドMだよ」
「けじめって意味でさ。そろそろ新しい恋してもいいんじゃね?」
島 左近ことさっちゃん(って言うと怒り狂うんだよ)がパチスロ攻略本を読みながらそう言う。左近、お前聞く気ないだろ。獣王はサバチャンが〜、じゃねーよ。高校生は入店禁止だろ、自重しろ。
「あれ、絶対デキてるよ」
「成実の勘違いじゃねーの?」
「…だったらいいな」
隣のクラスの刹那。俺の、好きな人。恋したきっかけはなんてことない。1年のとき、同じ委員会で仲良くなって好きになった、そんな、ありきたりな話。でも、最近その刹那と、従兄弟の梵こと政宗の仲が良い。二人一緒にいるときの空気がピンク色。どう見ても恋人同士が醸し出すそれと同じです、本当にありがとうございました。
「俺の情報では刹那ちゃんと政宗が付き合ってる、なんて情報はない」
好きな人はいるみたいだけど。と、読んでいた本を閉じて俺を見ると、にやにやと笑いながら続けた。
「とりあえず告ってみ?絶対上手くいくから」
「なにを根拠に…大体お前の話だと好きな人いるんだろ?」
「その好きな人が成実だったら?」
まさか、そんな訳、ない。だって刹那は俺をただの友人としてしか見ていない。
「俺が保証する。焼きそばパン賭けてもいい」
「俺も保証してやる」
「梵、どっから湧いた?」
俺が失恋するかもしれない原因の梵に保証されても嬉しくない。
「とにかく、告らなきゃなにも始まらねーだろ」
「ほら、丁度刹那ちゃんが校庭に」
言えよ。
梵と左近の目がそう言ってる。…そうだよな、言わなきゃ始まらないよな。フラれたっていい。刹那に、好きだって伝われば。
「………」
校庭にいる刹那が、俺達に気付いて手を振ってきた。梵と左近は手を振り返す。俺は一つ深呼吸をして、窓から身を乗り出して叫んだ。
「刹那ァァァッ!!好きだぁぁぁっ!!」
校舎の3階から愛を叫ぶ
(そこから告るのかよ!)
「俺の彼女になって下さァァァいっ!!」
梵と左近が口を開けて俺を見てる。刹那も驚いた顔で俺を見てる。刹那が、笑った。
『私もー!成実が大好きーっ!!彼氏になって下さーいッ!!』
「「「……マジで?」」」
刹那の返事に、三人の声が重なった。
(Unbelievable…)
(マジかよ…)
(保証するって言ってたのに、なんで驚いてんだよ)
(いや、マジで成実が好きだとは思わなくて…)
(やべー…彼女できちゃったよ)
((成実、爆発しろ))