みじかいの

□幸せ家族計画
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「ちょこ、」

『ちょこ?』

「ちょこ下さい。お願いします」


2月15日、雪の日。火鉢をいじりながら暖をとっていると、一つ下の従兄弟で伊達家の重臣、伊達成実が今にも死にそうな顔で私の部屋へとやって来た。私の顔を見るなり滑り込むように土下座をしたと思ったら冒頭の言葉。これが噂のすらいでぃんぐ土下座というやつか。


『ちょこって、なに?』


聞き慣れない単語に首を傾げながら成実に尋ねる。


「ほら、梵が言ってたじゃん?ばれんたいんとか言う南蛮の行事」

『あ、ちょこれいとってやつ?』

「そう、それ!」


そう言えば政宗がそんなこと言ってたような、言ってなかったような…その前は確かくりすます、とか…政宗の言うことって半分は理解出来ないけど。


『それで私にちょこれいとってのをねだりにきたの?成実も大概南蛮文化が好きだよね』

「面白いしね。だからちょこ下さい」

『ないよ』

「わっつ!?」

『だって知らないし、南蛮文化に興味ないし』

「…梵にはあげたんでしょ?」

『?…ちょこれいとはあげてないけど、おやつのみたらし団子ならねだられたからあげたよ』

「弟の特権…羨ましい」


今度は啜り泣き始めた。私にどうしろって言うのこの子は。


『城下に行ってねだってくれば?成実モテるし、言えば女の子達くれるでしょ』

「わかってないなぁ〜。俺は刹那から欲しいの」

『なんで?』

「だってばれんたいんって女の子が好きな男に愛を伝える日なんでしょ?」

『よくわかんないけど…政宗はそう言ってたね』

「だから俺は刹那から欲しいんだよ!」


畳をばんっ、て叩きながら熱弁される。女の子からの贈り物一つに、そこまで執着する成実がちょっとこわい。


「女の子が好きな男に頑張って想いを伝えるなんて、男として女の子のそんな可愛い気持ちを受け止めてやらなくてどーするんだよ!俺はいつでも受け止める準備は出来てるから!」

『まぁ…例えば奥州でばれんたいんが定着して毎年恒例の行事になったとしても、私が成実にあげる理由がないよね』

「言い切った!凄い笑顔で言い切った!」


熱弁していたかと思えば、次は涙目になる。本当、表情がころころ変わる子だこと。見ていて飽きない。


『諦めなさいな。それに私、年下って興味ないし』

「一つしか違わないじゃん!あーもうっ…刹那さぁ、そんなんだから嫁の貰い手ないんだよ。梵と双子で折角美人に産まれてきたのに…色恋の一つでもしないと本当に行かず後家になっちゃうよ?」

『そのときは成実がもらってくれるんでしょ?よろしくね』

「え?、うん…今すぐ貰い受けるよ」

「Hey、ちょっと待てお前等」







幸せ家族計画
(俺の存在無視して話を進めんな!)






(梵、いつの間にきたの?)
(最初からいたわ。つーか俺は認めねぇぞ)
(いいじゃん別に)
(No!刹那は何処にも嫁にはやらねぇ!)
(じゃあ婿にくる?)
(そうする)
(俺抜きで話進めんなァァァッ!!)

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