みじかいの
□白馬の王子様
1ページ/1ページ
「あ〜あ、残念。竜の旦那だけクラスが別だね。ざまぁみろ」
「今なんか言ったか猿」
高校二年生になりました。クラスは2年C組、名前は真田幸村。去年は同じクラスだった伊達政宗殿は隣のB組で、別々のクラスになってしまった。いや別に政宗殿とクラスが離れて寂しい訳ではないし、ぶっちゃけ佐助と同じようにざまぁ、とか思っていたりする訳だが、そんなことはどうでもいい。むしろ政宗殿とかどうでもいい。そこで青筋を立てて佐助と言い合ってる政宗死ね、と言ったところだ。去年と別段変わらない顔触れにほっ、とする。
「oh…雲雀と同じクラスか」
政宗殿は先程とは一転して嬉しそうな顔になる。嬉しそうな顔というか、なんかにやにやしている。気持ち悪い。
「なに?竜の旦那、雲雀さんと同じクラスなの?いいなぁ〜、俺様と変わらない?」
「ひばり…?」
佐助が羨ましそうにそう言うのを見て尋ねる。
「旦那知らない?雲雀刹那」
「知らぬ」
「じゃあ雲雀恭弥って知ってる?」
「雲雀恭弥を知らぬ者の方がおかしいだろう」
「その雲雀恭弥のお姉さん」
「…………え?」
雲雀恭弥のお姉さん。佐助はそう言った。雲雀恭弥と言えば、並盛中の風紀委員長であり、この町、並盛の支配者で、出来たら某が一生関わりたくない人種に分類される人間だ。
「ひひ…雲雀恭弥の姉上がこの学校にいるのでござるか!?」
「そ。美人だよ」
にへら、とだらしなく笑った佐助に思わず顔が引きつる。何故…何故某が関わりたくない人間の姉がこの学校にいるのか、今年は政宗殿のクラスは絶対に近付かない、と今決めた。そう決めたのに…
何故に某はその雲雀刹那に助けられているのか…今年は大殺界でござる。
帰り道、他校の不良に囲まれた。お前、ちょっとジャンプしてみろ、と言われたが、某はしなかった。いや、出来なかった。自分で言うのもなんだが、某は気が弱い。喧嘩や揉め事はなるべくなら避けて通りたい主義だ。こんな時に限って佐助はスーパーのタイムセール!と言って先に帰ってしまった。全く役立たずである。
『ねぇ、なに群れてるの?』
綺麗な声に顔を上げれば、そこには女子が一人。同じ制服を着ている所を見ると、某と同じ学校の女子らしい。
『今すぐ散るか、それとも恭弥に見つかって咬み殺されるか…選ばせてあげる』
「ヒバリ…雲雀刹那…」
え、雲雀刹那?この普通そうな女子が?最も関わりたくない人物を目の前に固まっていると、某を囲んでいた不良達が一斉に彼女に殴りかかる。ぎゅっ、と目をきつく閉じると同時に鈍い音が響き渡る。
『なんだ、食後の運動にもならないね』
目を開けると、そこには倒れる不良達と傷一つない彼女の姿。彼女はつまらなさそうに溜め息を一つ吐くと、某に向かって足を進めてきた。
『きみも極道の跡継ぎなら勇気を出して立ち向かったらどうかな。2年C組の真田幸村くん』
「何故…それを、」
『学校のことで私に知らないことはないよ』
そう言いながら不敵に笑い、じゃあね、と一言残して某の横を通り過ぎていった。
「雲雀、刹那…」
彼女の名前を呟く。
颯爽と現れて不良を蹴散らし、また颯爽と去って行く彼女の姿はまさに
白馬の王子様
(え、旦那が姫なの?嘘でしょ?)(配役が逆というのも一興でござる)
(旦那?どうしたの?)
(佐助…某、恋とやらをしたみたいでござる)
(へぇ…
え?恋?)
ヘタレな幸村ってなんか萌える