past
□10月18日まで。
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転んで怪我をしたら血が出るように。
外が明るくなったら目が覚めるように。
そんなふうにあたしは必然的に、飛段を好きになった。
生まれてはじめて銀色に輝く髪を見た。
くるくると子供のように動く桃色の瞳に焦がれた。
おそろいの黒のマニキュアは彼の透けるように白い肌によく映えて、それはエロティックでさえあった。
「声を聞きたい」というあたしの可愛い願望はいつしか「さわりたい」のレベルにまで達し、飛段がどうやったらあたしを好きになってくれるかという任務をクリアするために1日24時間のうち多分12時間くらいを費やすようになった。
(残り12時間は睡眠食事お風呂に費やしているから、つまりあたしは任務中にも関わらず常に飛段のことを考えていたという計算になる。)
「なァー今度の誕生日、何がほしいー?」
寒い寒い冬の夜、ひとつのコートのポケットの中でぎゅっと手をつなぐ帰り道。
あれほど焦がれた瞳があたしを見ている。
この時期になると毎年繰り返される会話。
あたしの答えはもう決まっているのだ。
(これ以上ほんとうにほんとうに何も、望むことはないのです!)