オリジナル
□月の涙 1
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「ソレイユ!遅かったじゃないか!毎日どこまで散歩に行ってるんだよ。」
「ちょっと途中で昼寝しちゃった。」
「またかよ。」
彼は、カイ。僕の友人だ。カイの親が僕の親に仕えているせいもあり、小さい頃から一緒に過ごしてきた。だからこそ、僕らの間には秘密はなかった。…今までは。そう、カイは僕がルーンに会ってることは知らない。僕は将来、族長になるから。そんな僕自身が罪人に会っていることは誰にも知られてはいけない。
「ソレイユ。族長がカンカンだよ。毎日、勉強の時間に遅れて。」
「ごめん、ごめん。」
困り切ったカイに対して、僕は悪びれもせずに謝り、歩き出す。
昼寝をしていたという嘘はとっくにバレてると思う。でも、カイは問い詰めない。僕たちは友人でありながらも将来は、族長と側近という関係になる。だからなのだろうか。最近は、一線を引かれているんじゃないかと感じることが多かった。だから、最近のカイは好きになれなかった。
「ソレイユ!!何してたんだ!!」
「ごめんなさい。父さん。」
「ここ最近のお前はおかしいぞ。お前は将来、族長になるんだから、もっとしっかりしなさい。」
「分かってるよ。」
最近の父さんは、凄く厳しい。昔は、凄く優しかったのに。あの時の面影はなくなり、口を開けば将来は族長になるんだなんて言ってくる。だから、今のお父さんは嫌い。
この集落に居る人たちは皆、僕の顔色を窺って接してくる。だから、嫌い。
最近は、こんな気持ちで溢れていた。そんな時ほど、僕はルーンの笛の音を聴きたくなるのだった。
ルーンの笛の音を思い浮かべながら、僕は部屋へと戻るのだった。