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□月の涙 2
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部屋に戻ってきてやっと、一息つくことができた。
 もう、潮時だろうか。ルーンのところに行くのは。カイは、確実に僕の嘘を見抜いてる。このままだと、ルーンに迷惑がかかるかもしれない。
 「もう行くのやめよう…。」
 そう呟いて僕はベットに突っ伏した。しばらくそうしていると、来訪者を告げる音が鳴り響く。僕は、その音を無視し続けたが、しだいにその音は激しくなり、扉は突然開かれた。
 「ソレイユ!いるんだろう!!」
 来訪者は、カイだった。なんとなく予想はしていたが、いつもは冷静なカイが随分と苛立っているようだった。僕は、無を起こしカイの方へ向き直った。
 「カイ…何?」
 せっかく一息ついたところを邪魔された僕は、不愉快な気分でいることを隠すこともせずに彼に問う。しかし、カイはそれをまったく気にも留めないというように僕に怒鳴った。
 「ソレイユ、俺に隠していることがあるだろう!!最近の君は、散歩に出掛けるとなかなか帰ってこない。いったい、何をしてるんだ?」
 「カイ…お前には関係ない。」
 当然、本当の事は言えない。それに、僕を心配して聞いてるんじゃない。イライラは、募っていくばかりで、僕はあんな言い方しかできなかった。
 「ソレイユ!!」
 「聞いてどうするんだよ!!父さんに報告でもするのか?それで、父さんのご機嫌を取って、父さんの信頼を得てどうするつもりだ?」
 「ソレイユ!」
 「出ていけ!!この部屋から出ていけ!」
 僕は、そう言って。ベットに寝転がる。もう、話はしないと態度で示した。しばらくすると、カイは諦めたのだろう。何も言わずに、部屋から出て行ったのだった。
 言葉が止まらなかった。最近のカイは、父さんの操り人形だから。いつも、僕を見張っている。そのせいで、カイへの不信感は募っていくばかりで、カイの言葉には素直に耳を傾けることができなくなってしまった。反発してもしょうがない事は分かっているのに。
 「ルーン、君の音楽が聴きたいよ…。」
 僕は、あの澄んだ音色を思い出そうと目を閉じた。そうして、先ほどのやり取りを忘れようとしたのだった。
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