金色のコルダ

□雨
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いつもの学校の帰り道。突然、和樹先輩が呟いた。
 「雨ってさ、空が泣いてるんだって。」
 唐突な呟きに、私は何か返すことができなくて。
 「え?」
 和樹先輩の方を見ると、和樹先輩は空を見上げてた。そしてまた、呟く。
 「空の流した涙が雨なんだよ。」
 最後の方は、私の方を向いて。
 私は、どう返答したらいいのか分からなくて。気づくと、和樹先輩に訳を聞いていた。
 「どうしたんですか?急に。」
 そこで、やっと唐突な会話だと言うことに気づいたらしく、慌てて弁解する先輩。
 「いや、雨が降りそうだなぁと思ってさ!」
 頭をかきながら言う、そんな先輩を可愛いと思ってしまう私はおかしいのだろうか。
 二人して足を止め、空を見上げながら和樹先輩に疑問をぶつけた。
 「和樹先輩は、雨は嫌いなんですか?」
 「まさか!大好きだよ!俺さ、まだ小学生くらいの時だったかな。毎日、雨が降るのを楽しみにしてたんだ。だって、雨の日って、長靴履いてカッパ着てさ、よく外で遊んでた。」
 先輩は、晴れが好きってイメージがあった。外に出るのが好きな人だから、雨は嫌いだと答えるかと思っていた。
 和樹先輩も空を見上げ、笑みを浮かべていたが突然、不安そうな表情に変わる。
 「…香穂ちゃんは嫌い?」
 「私も雨の日でも、外で遊んでいましたから。和樹先輩の言うこと分かる気もします。」
 さっきまで不安そうな表情をしていたのに、パッと明るい表情に変わる。先輩は、表情がくるくると変わるから、見ていて楽しい。思わず、頭を撫でたくなるくらい(笑)
 何より、雨が好きだと答えてくれたのが嬉しかった。
 「良かった!雨の日ってさ、晴れの日には見ることのできない風景がたくさん見れるじゃん。カタツムリやカエルがたくさん出てくるし。水たまりに入ると、気持ちいい音がして。よく、水たまりに入って、服を汚しては怒られたっけな。」
 小さい頃の先輩が服を汚して怒られている様子が容易に想像できて、思わず笑みがこぼれたしまった。
 「ふふ。」
 私の笑みには気にもとめずに、先輩は話しを続ける。
 「それに、涙を流せば次の日には元気になれるでしょ。だから、空も元気になるために泣くんだって思ってた。」
 驚いた。まさか、先輩がここまでロマンチストだったとは。しかし、流石に恥ずかしかったのか、頬をかきながら言う。
 「へへ、恥ずかしいね。」
 「そんな事ありませんよ。」
 本当に心からそう思った。私は、言葉を続ける。
 「…私、そう思うことができる和樹先輩が好きですよ。」
 ちょっと恥ずかしかったけど、心からそう思ったから…。先輩は、驚いた顔を一瞬見せたけど、顔を赤くしながらこう言った。
 「香穂ちゃん…。俺も大好きだよ。」

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