金色のコルダ

□君には敵わない
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俺は、特に用もないというのに、今日も普通科の教室の廊下を歩いていた。
 いいや、理由ならちゃんとある。最近、妙に気になる女の子の姿を見るためだ。
 「あっ・・・。」
 居た!とりあえず、どうしようか。挨拶して、普通科にいる友達の様子を見に来たとか言えば、誤魔化せるかな。それにしても、一緒にいるのは誰なんだろう。随分親しそうに話してる。いったい何話してるのかな?
 「香穂ちゃん!!」
 「あれ?火原先輩?」
 声かけちゃった!どうするんだよ!!俺!!突然声をかけたから彼女も驚いているじゃないか。
 「じゃ、俺行くわ。あと、宜しくな。」
 「あっ、うん。了解!」
 一緒に居た男は、一度俺を見て会釈をした後、笑顔で去っていく。2人の様子からかなり親しい仲だということがよく分かる。
 「・・・。」
 彼が去っていくのをじっと見ていた俺を怪訝に感じたのか、香穂ちゃんが様子を伺うような形で声をかけてきた。
 「火原先輩?」
 「あっ、ごめん。」
 「どうしたんですか?普通科まで。コンクールの事ですか?」
 「いや・・・へへ。どうやら、間違えちゃったみたい。」
 咄嗟に誤摩化す。馬鹿だ。さっき考えてた事を口にすればいいのに・・・。おかげで、彼女の怪訝な表情は今も消えていない。さすがに咄嗟の誤摩化しに気づいただろう。
 「ごっごめんね。話しの途中だったみたいなのに・・・。」
 「いえ、ちょうど終わったところでしたから。」
 「そっか・・・。」
気まずい・・・。もの凄く気まずい・・・。
 「私、今日、日直だったんですよ。彼は、そのパートナーなんです。今日、部活だからっていうので日誌書くの頼まれただけですよ。」
 「えっ・・・?」
 「なんだか、気になっているみたいだったから。」
 「へっ・・・?」
 「・・・違うんですか?」
 なっ・・・へっ?・・・いったい、彼女は何を言ってるんだ?
 「くすくす・・・冗談ですよ。」
 「へっ?」
 じょ・・・冗談?
 「それとも、本当に私の事、気に掛けてくれたんですか?」
 満面の笑顔・・・。ひょっとして俺、遊ばれてる?
 「からかったね!!香穂ちゃん!!」
 軽く香穂ちゃんの頭を小突く。香穂ちゃんは、「えへへ。」と言いながら舌を出した。
 ホント、香穂ちゃんには敵わないな。香穂ちゃんと居ると、もしかして、俺の気持ちがバレてるんじゃないかと思うことがあるんだよね。
 でも、もし俺が気持ちを打ち明けたら、香穂ちゃんは狼狽えるかな?

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