遥かなる時空の中で
□そんな君でも俺は
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「景時さ〜ん!」
「望美ちゃん。どうしたの?」
やっと、戦も一段落し、次の戦まで時間があるだろうということで京の屋敷に戻って来た所だった。
早速、洗濯でもしようと準備をしていたら、望美ちゃんが走ってきた。
「景時さん…はぁ、はぁ…ふう。お誕生日おめでとうございます。」
「あっ!」
すっかり忘れてた。最近、戦続きで今日が何日かも忘れてたよ。でも、今日ってたしか…。
「といっても、一日過ぎちゃいましたが。」
そう、俺の誕生日は3月5日。だから、厳密に言うと、誕生日は過ぎてしまっていた。でも、それなのに望美ちゃんは一息つきたいだろうに、ちゃんと言いに来てくれたんだ。その気持ちが本当に嬉しかった。
「でも、嬉しいよ!ありがとう。でも俺、教えた事があったっけ?」
「朔に聞いたんです。でも、ごめんなさい。お祝いの品が用意出来なくて…。」
それはそうだろう。なにせ、ついさっき帰って来たばかりなんだから。でも、朔から聞いて真っ先に言いに来てくれただけで充分なのにな。
「いいんだよ。こうして、直ぐに言いに来てくれただけで嬉しいよ。」
「でも…。」
それでも、不服という顔を見て、俺も困ってしまった。少し考えて俺は、一つ意地の悪い願いを閃いた。これを言ったら、望美ちゃんはどう思うだろうか。
「それじゃぁ…今日一日、望美ちゃんは俺のものってのはどう?」
さて、どんな顔をするのかな。しかし、予想を反してあっさりとしたものだった。
「分かりました。今日は、景時さんとずっと一緒です。」
まったく…この言葉がどういう意味か気付かないなんて。ここまで言ったんだから、そろそろ俺の気持ちに気付いてもいいと思うんだけどな。まっ、今日は独占できるんだし。今はとりあえずこれでいっか。