遥かなる時空の中で
□A liar
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「弁慶さん!」
昼食を食べ終え、そろそろ薬草を取りに行こうと準備をしていた時、突然、僕の大切な方に名を呼ばれた。…少し、怒気が含まれているような気がするのは気のせいではないのでしょうね。
彼女が怒っていることは分かってはいたが、怒られる理由が特に浮かばないため、つとめて平静に返事をする。
「おや、どうしたんですか?」
「私に何か隠してませんか?」
人差し指を弁慶の顔に突きつけ、低い声を出す望美。
「何を突然。私があなたに何を隠すんです?」
「質問に質問で返さないで下さい。」
呆れながら、そう反論する彼女。どうやら、嘘をついているという疑いは余計に深まってしまったようですね。
「なぜ、私が何かを隠してると思うのですか?」
彼女は、胸をはってこう答えた。
「いつもより、笑顔が3割増だからです。
「え?」
頭で理解するのに少し時間がかかってしまった。唖然としていると、彼女はそうとうな自信があるのかご丁寧に説明までしてくれた。
「弁慶さんって、嘘をつく時に表情を隠そうとするので、いつもより笑顔になってるんですよ。」
「そうですか?」
「そうなんです!」
自分にはそんなつもりはなかったので、思わず聞き返してしまったのだが、断定をされてしまった。
しかし、迂闊でした。バレないと思っていたのですが…。それでも弁慶は、嘘を突き通す。ここで、認めてしまっては、今まで嘘をつき通してきた意味がなくなってしまう。今後は、また違った方法を見つけなくてはなりませんね。しかし、今回はこれを通すことにしましょう。
「そんなことはありませんよ。この僕をあなたは信じてくださらないのですか?」
僕としては、これで彼女は信じてくれるだろうと思った。が!!
「はい。」
はっきりと、彼女はそう肯定した。
「あなたは、ひどい人ですね。」
額に手をつき、そう言われたことが悲しいということを態度で表してみる。これはどうでしょうか。
「だったらもう嘘はつかないで下さい。」
駄目でしたか・・・。
「ふぅ…。まいりましたよ。あなたに嫌われるのは本望ではありませんからね。」
今回は、観念しましょう。あなたには負けました。しかし、まさかここまで僕の事を知っているとは。心なしか嬉しくなりましたよ。
「腕を見せて下さい。」
「えっ?」
「腕、怪我をしているのでしょう?」
しかし、まさかここまで見抜くとは思っていませんでした。どうやら、僕はあなたの事を少しも理解していなかったようです。
「本当に、あなたにはいつも驚かせられますよ。」