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□桜咲クTRAIN
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桜咲クTRAIN




冬も終わりを告げる頃 雪解けと共に
臆病な二人 腕を伸ばして微笑んだ
小さな想いを積み重ねて 冷たい冬を乗り越えた
沢山の感謝と胸に抱いた愛おしさに僕も頷く
無邪気な横顔をいつまでも見つめていたかった

それはもう桜が咲く頃 君の悲しげな顔を見た
朝露の輝く 朝もやを通り過ぎて頬に風を受けた
忙しく街を行き過ぎる人々の足音は
活気に溢れているような どことなく無理な足音
僕はそんな騒々しさを通り抜けて君に逢いに行く

もう時間はない
君が向かう電車 ホームまで走る僕
君が乗り込む電車 目の前までやってきた僕
上手い言葉が出てこなくて俯いた
君は大丈夫と笑いながら涙を隠した
また逢えるさ 逢えるさ きっと
走り出した電車 途切れる会話
君が居ないホームで僕は気づいた
僕ら二人で一つ 愛していたんだ 確かに

何度も越えた冬を過ぎて桜も散る頃
夏の気配を乗せた風に心を誘われる気の浮いた
桜の木が立ち並ぶ長い長い道を歩くと 君の香りがした
振り返る僕に微笑みをくれたのは
向けられた『ただいま』に僕は涙した

君が旅立ったその背中に背負った強さに憧れを抱いた
まだ傍にある時気づく事が出来なかったその愛しさ
ひらひら散る桜 足元に積もる花びらの中
僕は強く君を抱きしめた
また逢えたよ 逢えたよ 君に
大丈夫さ きっと昔のように同じように
君を愛せると思うんだ
離れた時間に不安なんか持たないで笑って

すこしずつ取り戻せば良い
僕はあの時確かに愛していたから
あの頃より少し逞しくなった君の表情
なにも変わったことのないそのままの僕
きっとまた二人 歩いていけるさ

今年の冬は二人寄り添って 色んな話をしよう






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