「世界はいつだって僕を中心に回っている」

***
・病みヴィクトルが病み主人公を軟禁しています。


朝、ヴィクトルの声で目を覚ます。
毎日変わらない完璧な笑みで、おはようとキスを僕の顔中に降らせる。
差しだされるコップ1杯の水を飲んで、ヴィクトルと一緒にリビングへ向かう。
用意されている朝食を食べて、ヴィクトルが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、ヴィクトルがシンクで洗い物をするのを見守る。


ヴィクトルがさらさらと今日の予定を伝えてくるけれど、僕の耳がその情報をキャッチすることはない。
最後に告げられる帰宅の時間だけを脳みそにインプットさせる為に、ひたすらそれまでの時間を相槌に費やす。
僕の隣に居ないヴィクトルの予定なんか知りたくもないし、興味がない。

キュッ、と蛇口を閉めたヴィクトルは、「今日は19時には帰ってくるから、良い子にしておくんだよ」
「わかった」
その言葉にだけしっかりとした返事をして、外出の支度をするヴィクトルの後ろにくっついて家を歩き回る。


ネクタイを締めるのは僕の毎日の役割だ。
外に出る支度を手伝うのは気が進まないけれど、格好良いヴィクトルを完成させるのが自分だと思うと、誰に向けるでもない優越感が身体中に満ち満ちる。

今日もしっかりとノットを美しい形に仕上げ、ポンと叩いて終わりの合図を送る。

「今日も美しい出来映えだ」
「ん、今日も美しいヴィクトルの完成」
「ありがとう、愛してるよ」

ちゅ、とこめかみにキスを落とされる。
習慣化しているそれに、何故こめかみなのかと問えば、「ふよふよ浮く君の髪が可愛らしいから」という訳らしい。


完璧に支度を終えたヴィクトルが、僕の左足に枷を着けた。
昨日は右腕だった。
毎日同じ場所だと引きずったりしてる内に身体のバランスが崩れるからと、ヴィクトルは自分の中で計算して枷を着けているらしい。

足の方が邪魔にならないから好きだ。
利き腕からじゃらじゃらと鎖が伸びるのが嫌いなのはヴィクトルも知っているようで、他の箇所よりかは頻度が低い。
最初は耳障りだった鎖のこすれる音も、もう気にならなくなった。

鎖に緩みや破損がないか隅々まで確認したヴィクトルは、僕に向き合うようにして僕を抱き締めた。
「離れたくないな」
「うん」
「半日も君に会えないなんて」
「うん」
「明日はオフだから、今日は帰ったらゆっくりできるよ」
「待ってる」
「待っていて」

ヴィクトルの気持ちを代弁するかのような、長くて熱くて濃いキスを貰って、僕は夢見心地に浸る。
「愛してる」
「ん、僕も」
「ちゃんと言葉で言って」
「ヴィクトルを愛してる」
「誰よりも?」
「この世の誰よりも、ヴィクトルだけ」
「キスされるのも、ハグされるのも?」
「うん」
「君と一緒に食事を取るのも、話すのも寝るのも、ぜんぶオレだけだ」

こくりと頷く。
ヴィクトルはその美しい双眸に僕を映した。
うっとりとした表情で僕に言葉を告げて、家を出ていった。

「オレだけが君の“世界”だよ」

テレビはない。本もない。パソコンも携帯も、この部屋には存在しない。
ヴィクトルがいなくなった何もない薄暗い部屋で、僕はヴィクトルの帰りを待ち続ける。

>>>
読後に見返すと解釈が変わるタイトルを考えてみたかった。


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