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□氷室
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欲しがりな恋人を放っておいたおれが悪いんだけど……。
なんでしょうか、この状況は?




夏休みが始まり、運動部は大会に向けた長期合宿に出るのが多い時期だ。
かくいう氷室先輩も陽泉バスケ部エースの一人として、気合いが入らないわけがなかった。
弱小ではあるものの、おれの所属する吹奏楽部も合宿するのが慣例らしい。
関西で開かれる大会会場の近場で3泊4日の合宿を行い、2日間の大会を終えてから秋田に帰るのだ。
吹奏楽部の合宿が始まるその日までバスケ部は合宿を行うようで、会えなくなる期間は大体2週間ってところだ。
氷室先輩と付き合い始めてから2週間以上離れたことはなく、それでもお互い部活に精を出していればあっと言う間だった。

メールや電話が好きな氷室先輩は、毎日電話をしてくれた。
メールもたくさんくれたし、たまに景色の写真も送ってくれた。
練習している先輩の写真が欲しいと言ってみたら、劉先輩に頼んで撮ってもらったものを送ってもくれた。
いやぁ、汗かいて真剣にゴールを見つめている先輩はかっこよかった。
なのでおれも楽器と2ショットの写真を送り返すと、すぐに電話が掛かってきてその嬉しさを伝えてくれた。
おれを大切にしてくれているのは日頃からわかっているし、毎日連絡をくれるおかげで合宿も頑張れた。


大会はあと一歩というところで敗退してしまったけれど、来年また頑張りますと3年生に宣言した。
学校に戻ったらまたその次の日からは定期演奏会の練習が始まる。
帰りのバスに乗る時に、今から帰りますと氷室先輩にメールをした。
バスが出てすぐに寝入ってしまい、メールの返事に気づかないまま学校に辿り着く。

楽器を運び出して保管場所にしまい、へろへろになりながら部屋に戻る。
バスの中で変な寝方をしたせいか、首もつらいし寝た気がしない。
ぼんやりとした頭でどうにか制服を脱いで、パジャマに着替えもせずベッドに倒れ込むようにして眠りについた。
メールの受信を知らせる振動が何度も鳴っているのにも気づかないままだった。


***


なにか大きくて黒いものに押し潰されている夢を見た。
疲れていると金縛りになりやすくなるというけれど、それだろうか。
うーん、と唸るとそれは軽くなった気がしたんだけれど、今度はひたひたと全身に何かが触れて違和感を覚える。
身をよじってもそれは離れてくれなくて、ぬめりを帯びたそれは肌に馴染もうとしてくる。
じわりじわりと違和感が他の感覚に変わっていく。

「あ、」
思わず声が出た瞬間に意識が一気に覚醒した。
じゅるっ、と水分を含んだ音が耳に届いて、ついで自分の身体がびくりと跳ねる。

「へっ……?」
状況が掴めずに何度も瞬きすると、視界に入ってきたのは氷室先輩だった。
「おはよう」
「ふあ?えっと、おはよう、ございます?」
「それと、おかえり」
「あ、ただいまです」

ほんわかとしたやりとりに似つかわしくないのは、氷室先輩のジーンズの前が寛げられているのと、おれの下腹部というか股の間に氷室先輩の手が置かれているからである。

「いつ帰ってきたんだ?」
「え?えーと、8時くらい?ですかね」
「メールの返事がなかったから心配になって来てみたんだ」
「あ!そうだ、メール送ってからすぐバスで寝ちゃって、そのあと部屋に着いてからもすぐ寝ちゃって……」
小さくごめんなさいと謝るけれど、そんなことよりこの状況を説明してほしかった。


「その、氷室先輩?」
「何かな」
「この体勢というか氷室先輩の手の位置とか諸々……どういうことですか?」
何もおかしいところなどないと言わんばかりに首を傾げた先輩の髪がさらりと落ちる。
そんな先輩もかっこいいなぁとか見惚れてる場合じゃなくて!

「千晴とセックスしようと思って、とりあえず千晴を気持ちよくさせてる途中だよ」

常々、自由な人だとは思っていたけれど、こんな人だったっけ?
「それならまずおれを起こせば良いじゃないですか」
「疲れているようだったから、もし起きなかったら諦めようかと思って」
「そうですか……」

思い込んだら一直線の恋人が当然だというように発言するから、おれは諦めてこの事態を受け入れることにした。
いや、おれだってしたくないわけじゃないから問題は全くない。
氷室先輩はいつもおれを気持ちよくさせてくれるし、愛してるという気持ちを素直に教えてくれる掠れた低くて甘い声を実はかなり気に入ってたりする。

仕切り直しとばかりに唇を吸い上げられ、更にその先の舌が捕らえられた。
氷室先輩の複雑なキスはすぐにおれをぐちゃぐちゃにする。
絡めあっていた舌がこすれてジンと熱を持ち、ぬめったそれが舌の裏を舐めあげると身体が勝手に反応する。
舌を歯で引きずり出されると今度は軽く音を立ててちゅっ、ちゅっ、と吸い付いてくる。
舌を愛撫されている最中なのに、氷室先輩はおれの胸の尖りを指の腹でつまんでこりこりと捻りあげる。
かと思えば爪の先で乳首だけをかすめるように撫でてきて、シーツを握るおれの手はぎゅうぎゅうと力を抜く暇がない。

そんないやらしいことをされればもちろん下に熱が溜まってくるわけでして。
じくじくと落ち着かない屹立がなんだか恥ずかしくてもじもじと太ももを擦り合わせていると、その動きに気づいた氷室先輩が、
「あぁ、触って欲しい?」
妖艶な目を更に細めた途端に一気に色気が噴出して、おれはそれにあてられてしまった。

思わずこくりと生唾を飲み込んで弱く頷くと、笑みを浮かべて氷室先輩はおれの下肢に顔をうずめた。

「、あっ」
ぺろりと先端部を舐められ、腰が無意識に動く。
それに気をよくしたのか、氷室先輩は一息にそれをくわえてじゅぷじゅぷと扱き始めた。

恥ずかしいからあんまり声を出したくはないんだけど、氷室先輩に声を聞きたいとねだられてからは腹をくくって声を出すようにしてる。
自分のあんな声はそりゃあ恥ずかしいけど、氷室先輩が嬉しそうだからまあいっかって感じだ。
「んっ、ぁ、」
キスでわかるように氷室先輩は舌使いがうまい。
あの甘い舌に舐められて、柔らかい口内に包まれて、おかしくならないわけがなかった。
「ひ、ぅ、あんっ……」
早く出せといわんばかりに屹立の下にある二つのそれを揉まれるともう堪らない。
無自覚のまま跳ねあがる腰が止まらず、もどかしい。

「ね、氷室せんぱ……」
もう出させて、とお願いしようと氷室先輩を見やると。

「っ!!」
目尻を赤く染め上げて、少しだけ苦しそうに眉をひそめて、あれに押し上げられた頬が卑猥に形どられている。
極めつけにいつもは左目を隠している長くてさらさらの髪を耳に掛けて、こぼれないように手で押さえている様はひどくおれの劣情を刺激した。
「っ、ん!」
本当に男はビジュアルに弱い生き物だと思う。
びくびくと太ももの内側が痙攣して、告げる間もなくおれは氷室先輩の口に出してしまっていた。
「っ、はぁ……ふ」
胸を大きく喘がせて放埒の余韻に浸っていると、ごちそうさま、と満足げな氷室先輩がおれの身体を反転させた。
腰を上げるように持たれて後ろをほぐしやすい体勢にさせられる。
これは恥ずかしいからあんまりやりたくないんだけど、氷室先輩はこうやるのが好きだ。

「千晴があんまりにも可愛いからもっと気持ちよくさせたいな」
最中とは思えない爽やか過ぎる笑顔にもきゅんと胸が高鳴るんだから始末に終えない。
これからローションを纏った指で中をほぐされるんだろう。
こりこりと前立腺を刺激される快感が甦って腰を震わせると、ねっとりと温かいものが触れて驚いた。
「ひぅっ!?」
後ろを振り向いても氷室先輩の顔がほとんど見えなくて、抜き差しを繰り返すうねうねしたものが氷室先輩の舌だと気づくのに少し遅れてしまった。

「や、ぁ、なんでぇ……!?」
「ふふ」
そこを広げるように尻たぶを掴まれ、引っ張られる。
ぺちゅ、ぴちゃ。
水音に連動して中でうごめく舌を意識すると足ががくがくと震えた。

「あっ、だめ、せんぱ……、あぅっ」
「ん……気持ちいい?」
「変だから、やだぁ」
氷室先輩の舌が入っているなんて考えただけで憤死ものだ。
「でも、ちゃんと反応してる」
「あぁんっ!」
ぽたぽたと雫をこぼす屹立を強くこすられ、唇を噛み締める間もなく喘ぎがこぼれた。
くにくにと扱かれながら舐められて、もうおれのキャパシティーは限界。
じゅるっ、と中を吸いながら熱を持つ屹立の先端をぐりぐりされたらもうだめだった。


「ふゃぁぁぁっ!!」
過ぎた快感にくずおれた身体はビクビクと暴れ、パタリとベッドに倒れこんだ。
「あ……ん、ぁ」
まだ出るだろうと氷室先輩の指はまとわりついた精液を潤滑油にしてさらにこするスピードをあげていく。
「あっあっあっ……だめ、」
涙でぼやけた視界でも綺麗に映る氷室先輩にすがる。


「も、ちゃんと欲しいから、」
入れて、と涙目でねだると欲に染まった瞳にさらされた。
おれの精一杯の煽りにきちんと乗ってくれた氷室先輩は、もう焦らしたりせずに後ろを解してくれた。
ほぐしてもらいながら、おれは氷室先輩の屹立を舐めて準備万端にした。

「ごめん、久しぶりだから加減効かないかもしれない」
「……いいです」
腰に添えられた手の上にそっと自分の手を置くと、それが合図になって氷室先輩の熱い屹立が割り入ってきた。

「っく、は……」
質量の大きいそれに思わず息を詰める。
ぞろりと引き抜かれる動きに声が漏れた。
刹那、また押し入って来た熱がしこりを強く押し潰して、おれはひんひんと泣くことしかできない。
「いきなりっ、つよいぃ」
「っ、は……ごめん。余裕、ない」
ずっとこうしたかったと馴染んだ粘膜をこすりあげられるのが堪らない。

「熱くて、とろとろで、うねってて……最高だ」
「んっ、」
上ずった声でそんな感想を告げられると氷室先輩の形が如実に感じられて、思わずきゅんと締め付けてしまった。
「っく……動くぞ」
吐息だけの声音が聞こえた瞬間、ぐっと引き抜かれた欲望がめちゃくちゃに動き出した。

「ぃやぁんっ……!あ、あ、はっ」
気持ちいいしこりをしつこく刺激され、目を見開いて衝撃に耐える。
「あぁぁっ、ふ、んむ……っひ、」
氷室先輩の腰があまりにいやらしく動くから、おれはただただ翻弄されるばかりだ。
「だめっ……胸さわん、な、で……あぅっ!」
引き抜かれるかと思うくらいに強く乳首を吸われた。
びりびりと何かいけない感覚が全身を駆けまわって、シーツをかきむしる手は忙しない。

「やぅ、あ、も、いくっ」
「千晴、舌出して」
ドキドキと胸が張り裂けそうなのに、まだ氷室先輩はおれをぐちゃぐちゃにしようとする。
舌をひどく卑猥にねぶられて乳首を摘まみあげられ、パンッと肉のぶつかる音がして、一段と奥が氷室先輩の熱でいっぱいになる。
「せんぱいの、くるしっ……。おっきい、んぁ、あ、そこぉっ……ひぁぁぁぁっっ!!」
「っ、」
身も世もなくよがるおれは、快感漬けにされて喜んでいることが誰にでもわかってしまうような嬌声をあげて果てた。
搾り取るように蠕動する中で氷室先輩も何度か腰を打ちつけた後で熱を解放した。

「ぁん……あ、」
感じて仕方ない身体は、氷室先輩が繋がりを解こうとする動きすら快感として受け取ってしまう。
「だめだな。千晴が可愛すぎて治まりそうにない」
誘うように尖っている胸を押しこめるようにいじめられれば、あえかな喘ぎが漏れてしまう。
ひくひくと動く腰を手で留められ、また氷室先輩の熱が宛がわれる。
待ちわびていたかのようにやわらかなそこはまたくぷりとそれを呑み込んだ。

こくり、と喉を鳴らしたおれに氷室先輩は綺麗なアイスブルーの瞳を眇めておれの首筋にキスを落とした。




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アンケートにて氷室さんがあったので書いてみました!
なぜか氷室さんはアダルティーになってしまいますね。
また氷室さん書けたら書きたいです!
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