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□真琴
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「れ……い?」
「まっ、真琴先輩!ち、違うんですこれはっ」
れーちゃんは顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を振った。


あれ?これってもしかしてチャンス?
図らずもれーちゃんがおれを押し倒しているように見えるし、お誂え向きにもれーちゃんは顔を真っ赤にしている。
さすがに恋人が押し倒されてたら、いくら後輩とはいえども「俺の千晴に手を出すなっ!バキッ」くらいはありそうじゃない?

「千晴、大丈夫?ころんじゃった?」
はい、と優しい笑みで手を差し出すまこちゃんは、微塵も浮気を疑っていないようで。



嫌な考えが無数に脳みそをめぐり巡る。


「自分で起きられるよ」
ありがとう、と平気な振りで笑って見せた。
「れーちゃんも、ごめんね。ふざけすぎちゃった。それと、さっきのことももう大丈夫だから」
「い、いえ………」
一気に温度の下がったおれとさっきまでのおれとのギャップに混乱しているれーちゃんは呆然としてその言葉を小さく呟いた。

「千晴?」
どうかしたの?とでも言いたげなまこちゃんの表情に、なんでもないよ〜といつものように明るく接した。

「トイレいってきまーす!あ、先に着替えて準備運動してて!」
部室から出て、行くあてもないのでとりあえずトイレに向かう。

「千晴」
後ろから、愛しい声が聞こえてきて振り返る。
「あれ、まこちゃんもトイレ?じゃ、一緒にいこ」
「う、うん」
れーちゃんとミジンコの話してたんだーと他愛のない話をしていると、まこちゃんが足を止めた。
腕を掴まれたおれの足も数秒遅れて止まる。

「千晴、何かあった?」
「ん?特に何もないけど」
「本当に?」
「うん、本当に」
安心させるように笑んだら、まこちゃんは探るように瞳を見つめてきた。

まこちゃんは、鈍いくせにおれの感情の起伏には目端が利く。


「………俺じゃ、役に立てないことかな」
おれの言葉ではなく態度を信じたまこちゃんが、ぽつりと呟く。
「……ごめんね。おれの問題だから」
だからおれも、素直に謝る。
わかったんだ。おれがしなくちゃいけないのは、まこちゃんの気持ちを揺さぶることじゃないって。
そういったテクニックも恋愛には欠かせないんだと思う。
おれはまこちゃんとずっと一緒にささいな幸せを分かち合いたいだけで、ドラマチックな恋愛をしたいわけじゃない。
これまでと同じでいい。いや、これまで以上にきちんとまこちゃんに愛情を注げばいいだけなんだ。
まこちゃんを悲しませたり不安がらせるわけじゃなく、隣に居るのが当たり前な存在になれるよう努力する。
それがおれのすべきことだ。


「、そっか」

あぁ、そういえば、おれはいつもワガママばかり言っていて、まこちゃんを振り回してばっかりだったな。
面倒見のいいまこちゃんに胡坐をかいて寄りかかっていただけだった。
そろそろおれも、大人にならなきゃだめだなぁ。

「怜に、相談してたの?」
「え?」
「千晴、ここのところ悩んでたみたいだったから」
「き、づいてたの?」
「もちろん。だって、千晴のことなんだから。俺に相談してくれるんだろうなって思ってたんだけど……怜なら頭がいいしね」
「ま、まこちゃん?」
「俺じゃ千晴の力になれなかったね」
「まこちゃ、」
「悩みはもう解決したのかな。もう解決してたらいいんだけど。千晴といつもみたいに過ごしたい」
下らない笑い話をしたり、甘ったるいばかりの恋人の時間を過ごしたり。
「千晴が頼ってくれるような大人の男になるから、見捨てないでね」
まこちゃんの言っている意味がよくわからない。
だって、好きで好きでたまらないのはこっちなのに。
「……っこ、ちゃ」
「千晴?」
「どう、して……ヤキモチやいてくれないの」
「え?」
「おれがはるちゃんの隣に座っても、嫌じゃないの。なぎちゃんとキスできるくらいに顔を近づけても、嫌じゃないの。れーちゃんに押し倒されてたのに、嫌じゃなかったの」
ぐす、と鼻が鳴る。
やっぱりおれはまだまだ子供だ。まこちゃんをもっと愛せばいいとわかっているはずなのに、やっぱり嫉妬されなかったことが悲しくてたまらない。
「『千晴は俺のなのに』って、思ってくれなかったの」
まこちゃんの厚い胸板におでこを押し付ける。


「千晴は俺がずっと大好きで、これからもっと大好きになる一番大切な恋人だよ。千晴はもちろん俺のだし、俺もちゃんと千晴のものだよ」
緩く巻かれた腕が温かい。髪を梳くように撫でてくれる大きな手が心地よい。
いつもの抱擁より拘束はゆるいのに、身体の熱はいつもより深くまで届いてくる。

「千晴がハルちゃんのお世話をしても、気にならない。渚と一緒にわいわい楽しんでても、気にならない。怜に本当に押し倒されてたんだったら助けるけど……あれは本当に転んだだけだろ?だから、気にしないよ。むしろ、仲良くなってくれて嬉しい」

じわり、まこちゃんの言葉がまた涙腺をちくちくと攻撃する。
おれとまこちゃんの愛情の差は、こんなにもあったのか。知らなかったなぁ。

「でもね、」
おれの耳のてっぺんに唇を寄せたまこちゃんは、
「千晴が俺以外を頼るのは本当はすごく……嫌だ。千晴のお世話をしていいのは俺だけだから。どんなに怜が頭がよくて相談役にうってつけでも、俺を頼って」
俺だけにして。
ちゅ、と耳殻をなぞるように口付けられて、肌が粟立つ。
「次からは、俺を頼らないと……だめだよ」
ね?と鼓膜に直接響かせるように声を吹き込まれてしまえば、人形のようにコクコクと首を振るしかない。


「ふふ、千晴、顔が真っ赤だ。可愛い」
唇を噛み締めていやいやと首を振る。
まこちゃんが今まで隠し持っていた、とてつもなく肥大で深い愛情がこぼれてしまいそうだ。

「世界で一番大好きだよ、千晴」
「んっ……」
首筋に唇を落とされ、おれはビクリと身を竦ませて小さく喘いだ。

「あ、さっきはハルの隣でも気にしないっていったけど、俺の隣に居てくれないと千晴のお世話ができないから、俺とハルの真ん中に座ってくれると嬉しいかな」
そんな愛情パンチにノックアウトされたおれは、恥ずかしさと嬉しさが溢れだしてしまい、まこちゃんのシャツが皺くちゃになるのも構わずに力いっぱい握り締めた。


>>>
ド天然鈍感天使まこちゃんが書きたかったはずなのに、いつのまにかヤンデレ臭ただよう攻になってしまいました……。どうしてこうなった……。
自分以外が主人公のお世話をするのが嫌なので、ハルちゃんと兄弟の話をしてた時も頑なにお世話をされる弟をハルちゃんに推奨していたまこちゃんでした。

ところで、Free!楽しいですね!平川さん好きなので、怜ちゃんが萌えます。でも旦那したいのはまこちゃん!アイス分け合ってるまこはるちゃんが夫婦すぎて生きるのが楽しいです。
うたプリのトキヤに引き続き、宮野さん演じるキャラはぼっちの宿命でも背負っているのだろうか……。凛ちゃんがぼっちすぎて……(笑)江ちゃんを民宿まで送っていく凛ちゃんが、ちゃんとお兄ちゃんしててキュンキュンしました。江ちゃんがめっちゃ可愛い!江ちゃん癒されますなぁ(*^v^*)
渚ちゃんも負けず劣らず可愛い。代永さんさすがです!

Free!も更新できたらいいなぁと思いつつ。
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