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□真琴
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・なぜかまこちゃんが受け受けしい
・まこちゃんはれっきとした攻めです


真琴は、とてつもない我慢を強いられていた。
風呂に入ってくるという遙を千晴と二人で見送って、テレビの続きを見ていた時だった。
千晴がこてんと真琴の肩に頭を乗せてきたのだ。
これくらいならば日常茶飯事なので特に気にすることもなかったが、千晴が真琴の手を取って指先を弄りだしてきたので、真琴はテレビより千晴の動向を追ってしまうようになる。


「千晴?あ、あの……」
「んー?」
「ええっと、何してるの?」
「まこちゃん補充」
「はい?」
「ハルお風呂長いし、その間にまこちゃん補充しないと、僕そろそろ死んじゃう」
ぴたりとくっついてくる千晴は先ほどよりも幾分か色の持った指で真琴に触れてきた。
最近は水泳部の特訓とそれに拗ねる双子に振り回されてばかりで、千晴に構えなかったのは事実だった。

「ちょっとでいいから、ね?」
「………うん」
へにゃりと眉を下げて、それでも久しぶりの恋人の体温に触れて真琴はほっと息を吐く。
遙のように癖のない髪には天使の輪ができており、するりとした指通りを楽しむ。
そのまま指を頬に添わせてふにふにと柔らかいそれをつまむ。

「ひゃに?」
「千晴のほっぺたって触ると気持ちいいよね。すべすべともちもちの間って感じでさ」
「んー?まこちゃんのが柔らかそうだよ」
空いている手で千晴が真琴の頬をいじくる。
「ほら、のびーる」
「ひゃめへよぉ」
「おもちほっぺだー」
無邪気にきゃらきゃらと笑う千晴にまんざらでもない真琴だったが、次の千晴の行動に目を見開いた。

「たべちゃお」
はむっと真琴の頬を唇で軽く食むと、そのままぺろりと舐めたのだ。
「ちょっ、千晴!?」
「んー、味わかんないなぁ。じゃあこっちかな?」
ぱくりと今度は真琴の唇を健康的な白い歯で優しく噛む。
真琴が驚いている間にも千晴は舌を進入させていき、熱い真琴の舌に吸い付いた。


「んっ……ん、んぅ」
懸命に真琴の舌に絡み付いて、吸い上げて、こすりあわせる。
するりと真琴の耳から首筋を通る千晴の細い指にぞくぞくして、真琴は体内がマグマのように熱くなる錯覚を起こした。
千晴の甘くて柔らかくて敏感な身体を触りたくて仕方ない。

しかしここは千晴の家、もとい双子の遙の家で、しかもその遙は入浴中だ。
長風呂であるとはいえ、どれくらい時間が経ったかも定かでないし、遙は気配が薄いのでいつのまにか背後を取られている時もある。
そろそろ止めなければと真琴が鉄の理性を地面から掘り起こそうとすると、ふいに真琴の視界が変化した。


千晴の頭越しに絨毯がある。
千晴が真琴の首に腕を回して寝転がったのだろう。
押し倒している体勢になっている現状に追い付いていない真琴は首を傾げながら千晴を見やる。
ぺろりと睦みあっていた唇をひと舐めして、千晴はうっとりとした瞳でもって真琴にまた顔を寄せた。

「まこちゃん……」
耳元で吐息たっぷりに名前を呼ばれ、真琴は頬を染めた。
「ね、まこちゃん、きす………」
甘すぎる声音で囁かれては、若い身体が拒絶できるはずもなく。
真琴は何度も千晴の唇に触れて舌をねぶり、とろけるようなキスを千晴に贈った。


そうしてどのくらい触れあっていただろうか。
そろそろ甘い時間を終わりにしないと、遙がやってきて………。

「おい、風呂空いたぞ」
「っっっ!?は、ハル!!」
真琴の危惧は当たった。というか、完全に見られた。
それにこの体勢ではいくら幼馴染みとはいえ、言い訳はできないだろう。


「ち、違うからね!い、いや違わないんだけどそうじゃなくて……」
「真琴、風呂入ってくか?」
「えっ?あ、いや俺はうちで……」
「なら、千晴入れ」
「やだ、まこちゃんともうちょっといちゃいちゃする!」
「千晴っ!?何言って……」
「風呂出てからにしろ、冷める」
「は、ハルってば!?」

真琴と千晴の関係を遙が既に了承していることを知らない真琴は、涙目になりながら事態を誤魔化そうとしている。


「ちぇー……あっ!まこちゃん一緒に入ろ!」
「えええ!?」
「真琴を困らせるな」
「けちんぼハル!まこちゃん、絶対帰らないでよ!超特急で出てくるから!」

真琴の返事も聞かずに千晴が風呂場に消える。


「は、ハル?……その、」
遙の瞳をちらりと見ただけで、真琴には全てわかってしまった。
遙が全てを知っていることを。

「ええっと、その………ごめんっ」
「どうして謝るんだ」
「えっ、だってほら、千晴はハルの大事な家族だし、俺たち男同士だし……」
「いいんじゃないか、別に」
「へっ……?」
「昔からお前たちはずっとこんな感じだろ」

小さな頃から真琴は千晴のお気に入りで、今更関係性が変わったところで、真琴は千晴のお気に入りであることは変わらず、また真琴がこの先ずっと遙の幼馴染みであることも変わらないのだ。



「まこちゃーーん!!背中洗ってー!」
風呂場から聞こえてくる真琴を呼ぶ声に、遙と真琴は二人して吹き出した。
「昔からお前はあいつの世話ばっかり焼いてる」
「はは、本当だ」
「尻に敷かれてるって渚が言ってたぞ」
「な、渚も知ってるの!?」

今までの努力は何だったんだと頭を抱える真琴に、
「だから、そのままでいいんじゃないか」
無理して隠す必要もないくらい、自分たちはわかりやすいらしい。
顔から火が出そうだと両手で顔を覆うと、千晴の「まこちゃん、まだー?」と急かす声が聞こえた。
「今行くよー待ってて」


風呂場にいる愛し子に応えを返して、真琴は遙に「ありがとう、ハル」といつも通りの笑みを見せた。
「いいから、早く行ってやれ。またうるさくなる」
「あはは、うん」


俺って幸せ者だなと先程の焦りなどすっかり忘れて、真琴は風呂場へと向かった。


(あのね、ハル俺たちのこと認めてくれたよ)
(やっと言ったんだ!じゃあもう隠れなくていいんだね?嬉しい!)
(わっ、千晴っ、ちょ、んむっ……いくらなんでも、いきなりキスは……っ)

>>>
おめでたくハル公認になりました。
小悪魔主人公できていましたでしょうか……?

企画のご参加ありがとうございました!
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