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□黒子
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・主人公が後天性ショタ
・やりたい放題の中途半端
・黒子っちのキャラが大崩壊


from:黒子
to:火神

どえらいことになりました。

[画像]




日曜日の朝9時。
黒子とストリートバスケをする約束をしていた火神は、黒子から送られてきたメールを開く。
黒子らしからぬ物言いに首を傾げつつ、添付されていた画像を表示させた。

「……なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!」

火神家に雄叫びがとどろいたのは、言うまでもない。
状況を把握してはいないが、とりあえず黒子に電話を掛ける火神。


『もしもし。おはようございます』
「はよ。……じゃねぇよっ!お前なんだあの写真!」
『何だも何も、つい5分前の撮りたてほやほやですよ』
『あれって、日高だよな』
『はい。とりあえずボクも何が何だかわかりませんので、今日のストバスに連れて行ってもいいですか』
「いいけどよ……」
『ありがとうございます。それじゃ、10時にいつものコートで』

いつものように淡々と話を進める黒子に焦りは感じなかった。
何故関係のない自分がこんなに混乱しているのかと馬鹿らしく思い、黒子が焦っていないのならばいいのかと無理やり自分を納得させ、朝食をとるためにリビングへ向かった。
しっかりと腹ごしらえを済ませて約束のバスケットコートへと着いた火神を待っていたのは、想像通りだが小さな相棒と、相棒の足に絡みついている5才くらいの子供。


「………夢でもジョークでもねえんだな」
「それはボクも願っていたことですけどね」
「ふ……ぅええええ!!」
火神の険しい表情に怯えた子供は、黒子の後ろに隠れて泣き出してしまった。
「千晴くん、大丈夫ですよ。火神くんは人相こそ悪いですが、優しい人ですから」
「オイそれフォローになってねーぞ」
「びゃぁぁぁぁ!」
黒子の声を聞いていない千晴くんと呼ばれた子供は、黒子が千晴を抱き上げた途端に黒子のシャツを固く握って離そうとしない。

「本物の日高、か?」
「……おそらく。昨日千晴くんはボクの家に泊まっていて、朝起きたらこうなっていたので」
黒子と千晴が恋人として付き合っていることを知っている火神は、とりあえず黒子の言うことを信じることにした。
「うぐっ、ひっく」
嗚咽まじりにテツ、テツと黒子の名前を呼ぶ千晴。
「千晴くん、大丈夫です。怖くありません」
小さな千晴の背中をぽんぽんと優しくたたきながらあやす黒子に、火神は感嘆を漏らした。

「お前、保育士とか向いてんじゃね」
「子どもは嫌いではありませんよ。……というか、クラスメイトの火神くんも覚えていないとは」
「顔はそっくりだけど、完璧な子どもだし、記憶もない。どうしちまったんだ。黒子、お前のことは覚えてたのか?」
「いえ、僕のこともさっぱり。自己紹介したので名前は覚えてもらえました」
「なんつーか……。恋人がこんな姿になっちまったってのに、随分冷静だな」
「そうでもありません。起きてこの子がボクの隣ですやすやと寝ていた時は、1分ほどフリーズして寝顔を激写しましたから」
「冷静じゃねーか、いや、ある意味暴走してんな」
「だって!!小さい千晴くんですよ!重度の千晴くん病のボクがこんな奇跡を逃すはずがありません!」
「わーったよウルセーな!」

ボリボリと頭を掻いた火神は、さてどうしようかと回らない脳みそで考えた。
「とりあえず、バスケでもするか」
「火神くん……。君が賢くないことは知っていましたが、そこまでとは思いませんでした」

思いっきり残念そうな顔をした黒子に火神はブチギレる。
「うるっせぇな!じゃーお前は何かいい案あんのかよ!?」
「戻るか戻らないかも定かではありませんが、とりあえず今日は可愛らしい千晴くんを堪能したいです」
「お前のセーヘキが恐ろしいぜ、黒子……」
「千晴くんが大きいバスケットボールを必死に投げている姿を想像するだけでもうボク死にそうです」
「んな気持ちわりぃ死に方すんな!」
「死ぬわけないじゃないですか。その想像を現実にするまでは殺されても死にませんよ」
「……もう勝手にしろ」

黒子のおかしな発言に頭痛さえしてきた火神は、二人を置いてボールを手にコートへ入っていった。



「千晴くん。では、ボクたちはボールをパスしましょうか」
「ぱす?」
「そうです。ボクが投げたボールを、千晴くんがキャッチしてください。行きますよ」
投げるというより転がすといった方が近いが、黒子はボールを千晴にパスした。
トテトテと短い足で頑張ってボールを追いかける姿に黒子は心臓のあたりを押さえてうずくまった。

「破壊力抜群です、千晴くん……!」
「てつ?」
小さな手のひらで一生懸命持っているボール越しに千晴の心配そうな声が聞こえる。
「あぁ、大丈夫です。それでは、ボクにパスしてください。思いっきり投げてくださいね」
「う、うん」
小さな身体で力いっぱい投げたボールは、それでも黒子には届かずに何度かバウンドして黒子の所へ届いた。

「わぁ、上手ですね千晴くん」
「ほんとっ?」
褒められて嬉しかったのだろう、満面の笑みを浮かべる千晴にまた黒子の心臓は抉られた。
「一発KOですよ……」


「てつ!もっかい!」
「はい。いきますよ」
今度はボールをバウンドさせるようにして投げた。
バウンドするボールの動きに合わせて身体ごと上下させる姿も例えようもなく愛らしい。

「この世に天使が存在したとは、今日まで知りませんでした」
千晴の足に当たってあさっての方向に転がっていってしまったボールを追いかけて走る千晴をケータイのカメラで激写していると、足をもつれさせた千晴がずべっと顔から転んだ。
「……ふ、」
マズイ。そう思った黒子はダッシュで千晴のもとへ走る。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そうとう強かに顔を打ちつけたのだろう、鼻の頭と額が真っ赤に染まっている。

「千晴くん!」
「てつぅぅぅ!」
黒子に向かってまっすぐに差し出された腕は、千晴が黒子を必要としている証で。
千晴が泣きじゃくることも一瞬忘れ、黒子は起動しっぱなしのカメラでその泣き顔を収めた。

「オイ黒子。それはさすがにアウトだ」
火神が至極まっとうにつっこんで、もう黒子はダメかもしれないと諦観の目で二人を見つめる。
「はっ、つい。千晴くん、大丈夫ですか?あぁ、少しだけ皮がはがれちゃいましたね。大丈夫ですよ。大きな怪我じゃありませんからね」
ぎゅうっと抱きついてくる千晴の頭を優しく撫でながら水場へ連れて行き、濡らしたハンカチで傷口を拭く。

「うぅ……」
「大丈夫ですよ。すぐ痛くなくなりますから」
「ほんと?」
「ええ。痛いの痛いの、飛んで行けー。……ほら、痛いのはお空の向こうに飛んで行っちゃいました。もう痛くないでしょう?」
優しく微笑んでやると、涙目でコクリと頷く千晴。
「千晴くんは強いですね。えらいです」

千晴を抱き上げて火神に休憩を申し出ると、火神はまだ続けるとのことだったので、千晴と二人でマジバに行くことにした。
「千晴くんにとびきり美味しいものを教えてあげますね」
「美味しいもの?」
「はい。ボクの大好物です」


マジバに着き、レジに向かった黒子は、バニラシェイク二つと千晴用にポテトを注文した。
「はい、どうぞ。バニラシェイクです。冷たくて甘くてバニラの香りがするんです」
ストローを刺して千晴に手渡すと、小さな口でバニラシェイクを吸い上げた。

「飲めないよ?」
「あ、本当ですね。作りたてでまだ固いみたいです。溶けるまで少し待ちましょうか」
思い切り吸引したせいで顔を真っ赤にさせた千晴に今度はポテトを差し出す。
「熱いから気を付けてくださいね」
ポテトを一本、箱から出して千晴の口元に持って行くと、小さな口を大きく開けてカプッとポテトに噛み付いた。
「かわいいです……!!」

もぐもぐと咀嚼して、びっくりしたように目を丸める千晴。
「おいしい!これ何!?」
「じゃがいもを揚げたものですよ。フライドポテトって言うんです。たくさん食べて下さいね」
ポテトの箱の口を千晴に向けてやると、千晴は小さくぷっくりした手でポテトを掴んで、長いそれを無理やり口にねじ込んだ。
「そんなに詰め込まなくてもゆっくり食べればいいんですよ?誰も取りませんから」
子どもらしい仕草にくすくすと笑う黒子。しかし、しっかりとシャッターの音は響いていた。

「おいしー♪」
上機嫌の千晴は幸せそうにとろんとした笑顔を黒子に向ける。
火神が居ない今、誰も黒子を止める者はいない。黒子の独壇場だ。
シャッター音を響かせながら、黒子は思った。


普段の千晴くんもカッコよくて可愛いですけど、小さな千晴くんも例えようもなく可愛らしいです。
一週間くらいこの姿で居てくれないでしょうか……。
動物園、遊園地、水族館。
いろんな所に出かけて千晴くんのキラキラした笑顔をカメラに収めたいです!


「てつー、のどかわいたよ」
「そうですね。そろそろシェイクも溶け始めてきた頃でしょうし、飲みましょうか」
「うんっ」
小さな手でつかむカップはSサイズなのに、とても大きく見える。


もうこれは静画では千晴くんの魅力は伝えられません……!

携帯を操作し、カメラからビデオへと設定を変える。
ピロン♪と明るい音に、千晴くんは「?」と反応してこちらを向いた。

上目遣いかわいいです……!!

「どうぞ召し上がってください」
「はーい」

唇を尖らせてストローを吸う様が可愛らしい。
難なく口までたどり着いたバニラシェイクは千晴の口内をいっぱいにした。
ごくんっと飲み込んだ千晴は、キラキラと目を輝かせて満面の笑みを黒子に向ける。


「てつっ!これすっごく、おいしい!!甘い!冷たい!」
「ボクも大好きなんです。マジバのシェイクは神ですよね」
「うん!これ、だいしゅき!」


千晴くん可愛すぎです……!!!
天使です素敵です!


黒子はそんな千晴の笑顔にノックアウトされ、帰りが遅いと迎えにきた火神がマジバに現れるまで千晴と天国にいる気分を味わったのだった。




後日、何事もなかったかのように同い年に戻った千晴にその動画を見せると、千晴は顔を真っ赤にしてベッドに立てこもってしまった。

(やっぱりどの時代の千晴くんも天使ですね)


>>>
力尽きました……!

黒子×ショタ主をアンケートでリクエストして下さった方、かなり遅くなってしまって申し訳ございません!
しかもこんな残念黒子っちですすみません……。
でも書くのめっちゃ楽しかったです(笑)
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