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□レン
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・クップルがただの猫(≠セシル)



俺が読んでいるのは、表紙からしてキラキラしている女性誌。
なぜかといえば、恋人であるレンが出ているからだ。

『緊急企画!バレンタインにカレが喜ぶプレゼントでチョコと一緒に甘いひと時♪』

『ただいま人気急上昇中の神宮寺レンくんがオススメする、男子がもらって嬉しいアイテムを続々紹介しちゃいます♪』



レンがセレクトしたアイテムの説明やら、お決まりのバレンタインの話がつらつらと書かれている。

そしてこれまたお決まりの、好きなタイプの話になった。



「女性は皆、愛すべき存在だよ。だけどオレはもう恋人がいるからね」

「衝撃の事実ですね!一応これ、全国誌ですけど、このお話も載せちゃっていいんですか!?」

「構わないよ。隠す必要がないからね」

「男らしいですね(笑)ではでは、ズバリどんな方でしょう?」

「一日中一緒でも飽きないよ。感情表現が豊かで、くるくる表情が変わるのさ。いつもオレにすり寄ってきて可愛いんだ。それに、たくさんキスしてあげると喜ぶよ。今日は自分からキスしてきて、ぺろぺろ舐められたんだ。あぁ、それに撫でてあげると気持ちよさそうにしてね。世界中の誰よりも可愛らしいよ」

「ラブラブなんですね〜」

「もうベタ惚れだよ。オレの可愛い子猫ちゃんにね」

「あれ、もしかして神宮寺さんの"恋人"って……」

「もちろん子猫さ。とても可愛いんだよ。今頃、家でオレを待っているよ」

「猫の話ですか(笑)つい人間かと思っちゃいました。人間なら大スクープ間違いなしだったのに!それにしても、猫ちゃんに言っているはずなのに本当に恋人に言っているみたいで、なんだかこちらまで照れちゃいますね(照)」
「照れる必要はないさ。愛の言葉を受けることはとても大切なことだからね。もちろん、オレの愛しい子猫ちゃんにもさ」
「おお、さすがは愛の伝道師!さらりと素敵な言葉を言ってもらえると女の子は嬉しいですよね。神宮寺さんの魅力を再発見できました。それでは、最後に皆さんにメッセージをお願いします」
「今回、オレがオススメしたアイテムを参考に、気持ちのこもったチョコレートを添えて渡してあげれば、きっとロマンティックな夜を過ごせると思うよ。素敵な一日になるように心から願っているよ」
「ありがとうございました。素敵なバレンタインをお過ごし下さいね!」


一番始めからきっちり最後の鍵かっこまで読んだ俺は、ふるふるとわななく手で雑誌を握り潰した。

「れーんーーー!!!」
隣の部屋のドアを蹴破るくらい強く開けた俺は、ソファに優雅に座る「愛の伝道師」こと神宮寺レンを睨みつけた。

「誰が子猫ちゃんだって!?」
「もちろん恋人の千晴だよ」
俺がこうやって抗議しに来ることなんてお見通しだったんだろう。
レンは聞き返すこともなくそう答えた。

「全国誌でカミングアウトしたかと思って、変な汗かいちゃっただろ!」
「千晴が気づかないなら、みんな気づかないさ。それに、証拠としてクップルとオレのツーショットを雑誌発売日にブログに上げたから心配無用だよ」
「クップルはお前のじゃなくて、俺の飼い猫だぞ」
「飼い主の恋人なら飼い主同然だろう?」
「なんだそのよくわかんない理屈は」



「あ!忘れてた!それより、くっついて離れないとかすり寄ってくるとか舐めてくるとか、あることないこと言うなよな」
「オレは嘘なんて言ってないけれどねぇ。オレが帰ってくると嬉しそうに抱きついてくるし、いつまでもオレの腕の中に居たがるじゃないか。まぁ、離れたがっても絶対に離してあげないけれど」

妖しい笑みを浮かべて、レンは俺の腰にそっと手を添えてレンの方に寄せた。
「それに、この前千晴からキスしてきてくれて、オレの唇を舐めたとも事実だろう?いつもの表情を維持できないくらい驚いたんだ。もちろん、嬉しくてたまらなくて、ね」
レンの巧みな言葉にもうほだされてることに気付きながらも、とろけそうなほど甘ったるいそれに反論する気も起きなくて。

「もう絶対にあんな紛らわしいこと言うなよ。社長に知られたら大事なんだから」
「ああ、わかってるよ」
「それに!俺は猫じゃなくて人間だからな」
「ははっ、もちろんさ。だから、千晴も猫じゃなくて、人間の恋人に構ってくれないかい。クップルとキスをしているところを何度も見せつけられたら、さすがに嫉妬してしまうからね」
余裕そうに見えて、実はレンが妬きやすいことを知ってる俺は、その言葉に破顔した。

「わかった。レンが居ないとこでキスする」
「……まったく、千晴には勝てない」
苦笑するレンの顔を上に向けて、そっと唇を寄せた。
レンを見下ろしながらするキスは初めてだ。

「なんか、レンが可愛く見える」
「この格好が受け身の格好だからかな?新鮮だね」
「俺のハジメテだからな」
「おや、それは嬉しいね」
「じゃ、もっとあげる。誕生日だから、奮発な」
「千晴のハジメテか。なかなかそそるフレーズだ」
するするとシャツの裾からレンの指があがってきて、腰がジンと痺れた。

「……あ、愛してる!誕生日、おめでと」
少しぎこちなくなってしまったけれど、レンにはちゃんと俺の精一杯の気持ちが伝わっているはずだ。
「ありがとう。……オレは今日、世界一幸せだ。千晴を独り占めできるのも久し振りだしね。……甘えちゃおうかな」
「いい、よ」
レンは甘えるととてつもなくすごい(すごいっていうのは、いろいろ、だ)けど、俺は意を決して頷いた。

「えっ?」
「こ、これは誕生日だからじゃなくて……レンが好きだから」
最後だけもごもごと口ごもってもレンにはわかったようだった。
「完敗だね。どこまでオレを虜にすれば気が済むんだい」
「女の子が嫌いになっちゃうくらい、俺だけ好きになったら最高かな」
「言うねぇ。それじゃあ……千晴以外何も見えなくなるくらい、たっぷり甘やかしてほしいな」

レンが優しく抱きついてきたから、低く滑らかなレンの声が振動になって身体に響いた。
「うん」
「とろとろに溶けるくらいに、たっぷり、ね」
ソファに組み敷かれた俺は、レンのこと以外考えられなくなるような甘ったるいキスに溺れた。


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不完全燃焼すみません!
神宮寺さんお誕生日おめでとう!
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