zz

□トキヤ
5ページ/10ページ

・トキヤがトキヤっぽくない


トキヤと二人で出かけることになった。
といっても、ただの買い出しなわけだけど。

ST☆RISHのみんなでバーベキューをやるらしく、俺も誘ってもらった。
そんでジャンケンで負けた俺たちが買い出し係に任命されたわけだ。

「ふぃー、スーパーとーちゃーく」
「カートを持ってきます」
「よろしくー」
あちぃあちぃとシャツの裾をパタパタさせていると、眉をしかめたトキヤがカートを片手に隣に来た。
「公共の場ではしたない真似はやめて下さい」
「えー?だって暑いだろ」
「しかし、」
「いいからいいから!まずは肉売場行こう」

トキヤが押しているカートの先端を引っ張ると、トキヤもおとなしくついてきた。
「焼き肉用の肉とー、焼きそば用の肉とー、ソーセージ?サイコロステーキの肉と、内臓系も買っとくか」
「そんなに肉を買うんですか」
「食べ盛りのお子ちゃま二人がいるしな」
栄養のバランスが……とぶつぶつ言っているトキヤに構わず、次は野菜売場に向かう。
「玉ねぎピーマンとうもろこしキャベツにんじんもやしなす……こんくらい?」
「野菜は肉より多めに買うことをお勧めしますよ」
「おっけー。んーじゃ、こんくらい?」
「いいでしょう」
「よーし、じゃあ次、お菓子とジュース〜」
「菓子の類まで買うんですか?カロリーが多すぎませんか」
「まあ、今日は特別ってことで」
「はあ……」
頭が痛いと言わんばかりに盛大なため息をついた。
適当にスナックをかごに入れていると、トキヤが「二人で持ち切れなくなりますよ」といったので、素直にレジへ行った。
パリパリと音を立てるビニールを両手に持って、俺たちはスーパーを出る。

「そういえばさ、トキヤと二人ででかけるのって初めてじゃないか?」
「あぁ、そうですね」
「新鮮で楽しいなーって今更だけど思ってる。あは、これってデートだな〜?」
からかいを存分に含めた声音で告げると、目を丸くしたトキヤ。
内心で喜んでいた俺だが、今度は俺が目を丸くするはめになった。

あの冷静沈着キャラのトキヤが、耳まで赤くしてうろたえているではないか!
え、何その態度は?ここはいつもの冷めた目で「バカですか君は」とか言うんじゃないの?
お、俺までなぜだか恥ずかしいんですけど!

「あ、はは、トキヤってば顔まっかー……」
俺の精一杯の言葉にもトキヤは顔を逸らすばかりだ。
「や、つーか、えーと……」
な、なんだこの付き合いたてカップルの初デートみたいな雰囲気はっ!
ていうか、俺とトキヤは友達だし、男同士だし、恋愛感情とかありえないし!
トキヤも同じだと思うんだけど、どうしてトキヤは顔を赤らめているんだ……?

「いや、今のはジョーダンだから、って、わかってると思うけど……俺たちがデートとかありえないし、な?」
このままじゃ俺がスベったみたいじゃないか!と、どうにかこの雰囲気を消し去りたくて早口で告げた。

「……そうですか」
スタスタと歩みを速めたトキヤ。
あれ、ジョーダンかましたから怒った?
その歩みの速さに、トキヤは今まで俺に合わせてくれていたことを知る。

「とっ、きや、」
からかったのがそんなにむかついたんだろうか。
上り坂での加速は運動不足の俺にはキツすぎる。
さすがアイドル志望。基礎体力からして違うわけか。

「はあ、」
怒らせたのは悪いけど、追いつく体力もないから自分のペースで行くことにした。
ようやく坂の中頃までやってきた。
息を切らしてしまうなんて、若い男として恥ずかしいやら悔しいやらだ。
俯きながら歩いていると、ふと左手から重さがなくなる。
「ん?」
ついで、空いたその手には柔らかな感触。

「……こうすれば、デートらしいでしょう」
先に行ってしまったと思ったトキヤは俺の隣にいる。
トキヤの左手には俺が持っていたスーパーの袋。
右手には、俺の左手がおさまっていた。

「え?え?」
荷物は?とか、どうして戻ってきたんだ?とか、手をつないでるのとかデートとかいっぺんに情報が飛び込んできて、洪水状態の俺の頭。


「好きな人の荷物を持って、手をつなぐ。デートらしいでしょう」
「う、うん……」
煩雑としている頭で絞り出した答えに、トキヤは満足げに笑う。

「私と千晴でデート、ありえましたね」
「ん?う、ん」
首を傾げながらも頷く俺。
あれ?流されてる?
ていうか、まだ手をつないだままなんですけれども!
トキヤさんの手のひら意外にやわっこいですね!なんて現実逃避した。


「不服そうですね」
「え?いや、べつに、」
「では、もっとそれらしいことをしましょうか」
「ふぇ?」

目の前がふと暗くなったと思ったら、整った顔が眼前に近寄ってきていて。
「ひゃっ?」
驚きのあまりのけぞると、お約束のようにたまたま後ろにあった電柱に後頭部をクリーンヒットさせてしまった。

「あだっ!」
「……ふっ、く、ははっ」
俺の醜態に笑いが止まらなくなったのか、トキヤは腹を抱えはじめた。
「おっ、驚かせるなよな!」
「君は、本当に外しませんね。予想に違わない」
「っ、もう!先行くからな!」
ぶつけたところをさすりながら歩きだすと、まだ笑っているトキヤが追いかけてきた。

「すみません、つい」
「つい、じゃない!」
「まあ、デートなんですから」
そう言って再び手をつないできたから、全力で振り払おうとした。
……トキヤの力が意外と強くてできなかったけど。

「はーなーせぇぇ」
「上り終えるまでですから」
頑固なトキヤは譲ってくれそうにないし、実際俺が振り払えないので、大人しく従うことにした。

トキヤが先に来て置いたであろう荷物のところにようやく着いた。

「ほら、離せ」
「はい」
素直に離してくれたと思いきや、電柱にぶつけたところにキスを落とされた。

「ぎゃっ!なにすんだ!」
「デートにキスはつきものかと思いますが」

したり顔のトキヤに、俺は軽くケリをいれることしかできなかった。

(恥ずかしがることはありませんよ、手も繋いだ仲じゃないですか)
(うーるーさーい!ありえんっ)

>>>
トキヤのキャラが……!!gkbr
途中拗ねたけど持ち直したトキヤん。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ